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2022年08月23日11:40

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スティーヴン・キング偏愛映画!?「ブラック・フォン」

事前情報として重要なので最初に書きますが、この映画の原作を書いたのはジョー・ヒルという人。
当初はその素性を隠していたそうですが、あのホラー作家の帝王、スティーヴン・キングの息子なのです。
僕はこの方の小説を読んだことが無いのですが、父親同様にホラー小説を中心に書いているようです。

この「ブラック・フォン」という映画について、実はそれほど注目していなかったのですが、高い評判を聞いて後から興味を持ちました。
めでたく静岡でも遅れて上映されたので観に行ったのですが・・・。
本当に、良い意味でも悪い意味でもスティーヴン・キング感が詰め込まれた映画だな〜というのが一番の感想です。

スティーヴン・キングという作家の作品についての印象は、人によって異なると思います。
たくさん読んでいるか、ごく一部だけなのか、映画化されたものだけ知っているのか。
これによっても随分変わるはずです。

自分のスタンスですが、まあまあ読んではいるものの、圧倒的に読んでいない作品が多いです。
最初は短編集(深夜勤務とミルクマン)でした。
かなり昔に読んだのですが、正直「なんだこりゃ」と呆れるものが多かった記憶があります。
怖くないし、むしろバカバカしい。
ミステリーばかり読んできた自分には、単に荒唐無稽な印象しか残りませんでした。
その後「ミザリー」を読んで、これの指ケーキが一番怖かったかもしれません。

それから随分後になって、どういうわけかマイブームとしてキングの本をたくさん読みたい時期が来たのです。
きっかけは覚えていませんが、多分映画化された何かがそうなのでしょう。
中古本でした手に入らないものも多かったので、ブックオフ等で色々買いました。

この時一番面白かったのは、リチャード・パックマン名義で発表し、シュワちゃん主演で映画化もされた「バトルランナー」でした。
ホラーでは無くSFスリラーで、かなり毛色の違う異色作だと言えます。
映画版の能天気な感じと対極の、非常にシリアスかつアバンギャルドな内容で、結末には大きな衝撃を受けました。
いつかこの通りの内容で再映画化して欲しいですが、難しいでしょうね。
倫理的に。

あの有名な「IT」も、文庫本4冊を長い時間をかけて読み終えました。
こちらはまさに王道、キングの闇鍋小説と呼べるもので、映画よりもさらに混沌としつつブッ飛んだ内容です。
これを読むと、キングがどういう作家なのかが非常に理解できるはずです。
ただのエンターテイメント作家等では全然無い。
異様で異常な個性を持った奇想作家であり、感覚的にどんどんとアイデアを上から盛っていくタイプの、パワー系作家なのです。

理屈では無く、読者の疑問や困惑に「これでいいんだ!さあ行くぞ」と力強く応えて前に進ませる力を持った人なのでしょう。
そうするとまた違う面白い事が起きるので、さっきまでの割り切れない気持ちは忘れてしまう。
「あれは伏線だったんだよ、スゲェだろガハハ」といった展開にも、「それ今考えましたよね・・・」という疑念がありつつも、同意して一緒に笑ってしまう。
そんな「憎めないワンマン社長」感が魅力なのだと思うのです。

長くなりましたが、「ブラック・フォン」はそんなキング作品をどれだけ知っているか、そしてどれだけ好きかどうかで評価が分かれる映画だと思います。
子供とは思えないウルトラバイオレンスいじめシーンとか、ピエロみたいな殺人鬼とか、冒頭はかなり「IT」を思わせます。
親父がクズという設定もよくあるし、妹が何故か予知夢能力を持っているという唐突さもキングらしいです。

主人公の少年がイーサン・ホーク演じる殺人鬼に誘拐され地下室に閉じ込められると、なぜかそこには黒電話が。
・・・たまたまあったのです。
そして、電話線の繋がっていない黒電話のベルが鳴る!
もちろん死者からのお電話でした。
過去に誘拐されて殺された少年達からの、決死のアドバイスをゲット!
でも役に立たない!
すると別の死者から新たなアドバイスが・・・。
そんな調子です。

予知夢+マスク殺人鬼+死者からの電話・・・。
これらが混じり合ったのは、本当にたまたまです。
理由は、思いついたから!
面白そうだから!
確かにそれぞれは面白いのですが(組み合わせ自由な殺人鬼のマスクは、ドンキホーテで売ったら人気出そう)、どんどん足される要素に「ちょっと待って!」と、保険のCMの尾木ママみたく叫び出しそうになります。

この映画の世界は、さしずめ「キングのテーマパーク」みたいな場所なのでしょう。
望めば、人殺し犬だって、宇宙人だって、顔の付いたトラックだって登場するのです。
そんなの、幼稚でくだらない!
そんな思いを抱いた瞬間、豚の血を浴び、体は燃え上がってしまうのです。

キングの面白さ、奇抜さ、楽しさといった部分だけでなく、強引だったり、無茶だったり。いい加減だったりする部分も「そこがたまらない」と愛してしまうファンであれば、この映画は絶頂の連続だと思います。
特に終盤の、いくつかのオチ的な部分・・・。
どこかで見たやつだな、と個人的にはテンションが下がる部分でしたが、「出た!あの作品のアレだよね!ウケる!」とジャンプして喜べる人もいるのでしょう。

ジョー・ヒルの小説は読んだ事がありませんが(後で読んでみたいと思います)、この作品の原作は短編という事で、おそらく映画化でかなり色々と要素が足されているのでしょう。
キング愛を、たっぷりと。
ただ、それぞれの要素は良くても、エモーショナルにこちらを最後まで引っ張っていくパワーが、若干足りなかった気がします。
もっと笑えて、泣ける話に出来たはず。
非常に惜しいと感じてしまいました。

良い部分の中でも一番は、やっぱり主人公の妹です。
あらゆるセリフや態度が最高で、彼女こそ中心に据えるべきだと思いました。
彼女が幽霊に特訓を受け、カンフーでイーサン・ホークを倒す!
そんな展開だったら最高だったのに。

あと、誰の弟とは言いませんが、あの弟のバカさ加減も良かったです。
本当に、「そんなバカな」と100回思える映画でしたね。

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