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2022年08月20日16:30

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展覧会とSNSのお話

 やはりSNSを観て展覧会に足を向ける人も珍しくないのですね。

 僕は休日になると美術館やアートギャラリーに足を向けることが珍しくありません。あまり遠出をする機会は多くありませんが都内や近隣だけでも数多くの展覧会が開かれていて,休日どころか時間のある平日まで費やしても到底回り切れません。美術好きにとって非常に恵まれた環境にあるということを,改めて有り難く感じます。美術館だとあまりそういうことはありませんがアートギャラリーだと作家さんが在廊していらっしゃることも多く,旧知の方に「よく来てくれたね」などと感謝の言葉を向けられることも稀ではありません。
 では,一体どのように「この展覧会に行こう」と決めているか。「通りすがり」というのはごくごく稀で,大抵の場合には「今日はこの展覧会に行こう」と事前に決めてから足を向けています。そうした際に雑誌や広告などを参考にする昔ながらの方法を取ることも勿論ありますが,殆どの場合にはネットを使って情報を集めます。美術館やアートギャラリーのホームページを見たり,或いはSNSを検索したり。特にSNSで「こんな展覧会に行って素敵だった」という投稿を見て「僕も行ってみたい」という思いに囚われて足を運ぶことも稀ではありません。

 昔は展覧会においては写真撮影禁止というのが当然のことでした。「外国では別料金を払うと撮影を認める展覧会もある」などというお話を聞いて「国によって文化は色々だなぁ」ということを思ったりもしたものです。日本では今もそうした撮影禁止の展覧会のほうが一般的ではないでしょうか。特に美術館においてはそうですし,アートギャラリーでも「撮影禁止」と壁に書かれているのをよく見掛けます。しかし最近は少しずつ変わってきたようです。たとえば国立西洋美術館や東京国立博物館の常設展は,原則として撮影が許されるようになっています。アートギャラリーなどでも「撮影可」というところが増えて,何やら申し訳無いような思いを感じることすら稀ではありません。そしてこちらに挙げられている六本木の森美術館や,その他にも同じく六本木のサントリー美術館や外苑前のワタリウム美術館などは(これらの美術館には常設展示がありませんが)企画展でも原則として撮影が自由です。しかも日本では別料金を徴収しませんね。
 これは僕にとっては極めて有り難いお話です。僕は美術作品を撮影をするとなると「この作品の特徴や美しさを的確に捉えるのにはどのようにすれば良いか」と一生懸命考えますし,またそれをSNSにも投稿するとなれば何か写真にコメントを添える関係上「何がどう良いと思ったのか」を言葉にしなければならない。これを読書に擬えると,通常の鑑賞ではしばしば流し読みになってしまうのに対し,撮影しながらの鑑賞は精読に相当すると申し上げると的確でしょうか。とはいえ,撮影を許して下さる美術館やアートギャラリー・そして作家さんへの感謝の思いは当然として,それ以外にどこか後ろめたい思いを感じることも無くはありませんでした。僕であれば作品の写真を見て実際の作品を鑑賞したい・或いは手元に置きたいという思いが強まることはあっても弱まることはありませんが,人によっては写真を見て「これで充分」と感じてしまうかもしれず,それはひいては美術館やアートギャラリーの正当な利益を損なうことになりはしないか・・・と。無論「ここに来れば展覧会を鑑賞出来るよ」「この作家さんの作品を他にも観たい方はこちら」といった情報を提供出来るよう,撮影場所を明記したり作品写真に作者さんのタグを付けたりといったことは心掛けているのですが。

 しかし今回,こちらの記事を読んで「そうしたマイナス面よりも,プラス面のほうがやはり大きいのではないか」と思えるようになりました。六本木の森美術館はこれまでも原則として撮影自由でしたが,同が主体のSNSであるTikTokの普及に合わせ,動画についても撮影時間の上限を撤廃したというお話です。記事によればこれによって「(主要な)TikTokユーザー層である10代、20代の合計が52パーセントだったのに対し、実施後は70パーセント以上に上昇。森美術館に初めて来館した人は、実施前の33.3パーセントから59.5パーセントへと倍増している」とのことで,多くの美術館に共通する課題である若年層の取り込みに大きな成果を挙げているようです。この記事だけでは断言は出来ませんが,SNSの投稿を見て展覧会に足を運ぶのは僕の特異な反応ではなく,世間一般のごく普通の捉え方だったと言えそうな雰囲気です。「本当の美術好きならば作品の写真を見たからといってそれだけで満足するということは無いだろう。むしろ作品を観たい・手元に置きたいという思いを強めるに違い無い。つまり撮影・SNS投稿は集客や販売に有益でこそあれ決してマイナスではない筈だ」という僕の予想も,どうやら正解ではないかとも思えます。因みに僕はTikTokを使用していないし,そもそも動画を撮影せずSNSに投稿するのも全て静止画ですが,理屈としては概ね同じでしょう。

 こちらの記事を読んで,何だか胸を張って撮影に臨めるような気持になって参りました。無論,他の鑑賞者の邪魔になってはいけませんし,またあくまでも美術館やアートギャラリー・或いは作家さんのご好意で撮影させて頂けるのだという感謝の気持ちは決して忘れてはいけません。そして撮影させて頂くからには美術館やアートギャラリー・作家さんにメリットがあるようにきちんと撮影場所・展覧会名・作者氏名を記載することも心影るべきなのも当然です。そういった事柄をしっかり心掛けた上で,作品の精読にあたる撮影とSNS投稿をさせて頂こう。僕はそのように思っています。



TikTokが美術館を変える?  森美術館の取り組みから考える、2020年代の広報戦略
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/25793
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