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2022年08月15日13:46

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足仮面

足仮面(パルタル)
後述:李東安(イ・ドンアン)、朴海一(パツ・ケイル) 採録:沈雨晟(シム・ウソン)



オリッ広大(クァンデ) こいつ、またぞろ軽口叩く気だな。いやあ、こいつめお客さんがたくさんいらっしゃったのに挨拶するのじゃ。
足仮面 こんにちは?たくさんいらっしゃいました。
オリッ広大 おほ、あやつめ挨拶しおった。お前を見にきたお客さんなんだからお客さんをおもてなしせい。
足仮面 なにしようか?
オリッ広大 お前踊りを踊らないのか?踊りひとくさり踊るのじゃ。
足仮面 そんならチャンダン(長短)うって。クッコリをおどろう。

クッコリ長短に合わせて足仮面が踊りを踊り、オリッ広大が舞台上をこちらあちら走り回りながらよおし(チヨツタ)、いいぞ(チヤランダ)、オルシグトゥングロ合いの手を入れた。

オリッ広大 あーった、あやつめ良くも舞うたわ。やあ、こいつめ踊りさえ踊りゃおわりかえ?唄ひとつカマすのじゃ。
足仮面 うたはどのうたをやろうか?
オリッ広大 朝鮮八道良い山河遊覧し回り万古江山をやるのじゃ。
足仮面 チャンダンうって。マンゴカンサンだ。

オリッ広大が足仮面の前で太鼓チャンダンを叩いた。楽士席の楽士たちは風楽を奏でずに休んだ。

万古江山 遊覧するとき 三神山が なんばんめ、
一蓬莱 二方丈 三瀛洲(えいしゆう)では ないよ。
竹杖 ついて 風月 つんで 蓬莱山を みにいくとき 
鏡浦 東嶺に 明月を みにいき 
清澗(せいかん)亭 洛山寺と 叢石(そうせき)亭を みにいって 
断髪嶺を いそいで こして 蓬莱山を のぼりきっては 
千嶺万壑(ばんがく) 芙蓉ヶはらは てんの うえに そびえたち 
百折瀑布 ほとばしる みずは 銀河水を かたむけた ように 
仙鏡いちどに はっきりした。
ときまさに 暮春だ あかい はな あおい はっぱと 
うまれる ちょう さえずる とりは 春光春色を とくいにした。
蓬莱山 よき ながめ 咫尺(しせき)に ほうっておき 
みおとしてから いくにちしたろう。
多幸な こんにちに 万古江山を 遊覧し 
ここに 到着して すぎたひが あたらしくきて、
おお、このよの ともたちよ、桑田碧海(そうでんへきかい) わらわないで。
落葉 花落 しないではないか。
西山に しずむ ひは 楊柳絲に すがり 
東崩に かかった つきは 桂樹に おちついた。
いつまでも たのしんで いよう
いや たのしんで いけないことが あるだろうか。
することを して ゆけば たのしみがみえよう。

オリッ広大 あーった、あいつめ唄もよくやりおるわ。出ずっぱりな奴。いんまー、踊りをもうひとくさり踊るんじゃ。
足仮面 ホットゥンタリョン(打令)をうって。

打令に合わせて踊りを踊った。オリッ広大が舞台上をこちらあちら走り回っったあげく立って合いの手(チユイムセ)をいれた。

オリッ広大 やあ、こいつ。ほんとに良く踊るな。おまえ開城南峯歌(ケソンナムボンカ)は駄目か?
足仮面 たっときなかみははいってる。
オリッ広大 ひとくさり行きな。
足仮面 あーった、あいつこのうえまだやらせるんだ。

楽士席で太鼓チャンダンをはじめとして、縦笛(ピリ)、横笛(チヨツテ)、胡弓(ヘグム)、杖鼓(チヤンゴ)が伴奏を引き受ける。オリッ広大は舞台上を走り回っては合いの手を唱えた。

朴淵瀑布 ふきおちる みずは 
あらゆるなやみを くねらせ きえる。
(繰り返し:エーヘイヤー エー エルファー 
チョッコ チョッタ オラハムマディエラ ネー サランア)
朴淵瀑布が みずから どんなに ふかくしても 
わたしら 両人の 情けばかりは どうにもならぬ。(繰り返し)
三十丈 断崖から 飛流が 直下へ 朴淵に とどいて 
あらゆるなやみを くねらせる。(繰り返し)
月白雪白 天地白となり 
山深夜深となり 客愁深まる。(繰り返し)
乾坤が 不老 月長在りて 
寂寞江山が 今百年となる。(繰り返し)
するする 東風に ながあめ ふって
時和年豊に はやしのあたりで あそぼうとさ。(繰り返し)
うえた 百姓を ふねに のせ 
わたろう おおきな 富村だから。(繰り返し)
いくたびに 情けをおいて 離別は しょっちゅう 
わたしゃ いきて いけないねえ。(繰り返し)

オリッ広大 よう、そこの。お前職業はなんじゃ?
足仮面 やあ、そこの。しょくぎょうがなんだって、おかねをいれとくのがさいふさね。
オリッ広大 よう、見ろ。一体全体お前がやって食って生きてるのは何だって?
足仮面 このとんちきをみておくれ。
オリッ広大 何?
足仮面 なにくっていきる。こめくっていきらあ。
オリッ広大 いやこいつ。めし食ってまた食うってことか?
足仮面 おいらがくうのはなんでもだあ。
オリッ広大 そりゃ何をそんなにたらふく食うんだ?
足仮面 そりゃくうもんをおいらの、はにいわせりゃこうなるね。きのこもまたくって、どんぐりもひろってくい、くりもひろいぐい、なつめもくえば、ひきしおのなまもんはぶっころしてくい、みちしおののはらはぶっころしてくい、さけものんでつまみもくらい、またくっておかずもくって、ぼら、いしもち、ひらまさ、たちうお、はばひろのあかがれいに、まるまるとしたえい、こい、なまず、かむるち、おこぜ、うなぎ、ひらべったいいか、にべ、こしのまがったえび、ひとをみりゃざくざくさしてくるおにおこぜ、けつぎょ、ちくちくさしてくるあかざ、どしゃどしゃするどじょう、はやせにすんでるはや、すなにもぐったかい、くねくねうねるかわさっぱ、みずきじ、やまばと、やまきじ、ながあめになくじむぐりがえるまでみいんなとらえてくっちまおう、かえるまでみいんなとってくって、さめ、くじらまでくうぞ。まだひとつある。
オリッ広大 まだひとつぁなんだや?
足仮面 おいらのばあちゃんそいつもくって、おいらのじじいそいつもくって、いまやっとやることないさかないちばになったんだ。
オリッ広大 あいぐ、あやつめ。たっとくて見ておれんわ。

足仮面をパンとはたくふりをして、何歩か退いたがまた近よった。

魚売り場売りゃあどうなるとな?
足仮面 そらぁしょうばいしたよ。
オリッ広大 うわあ強すぎてたまらんわ。
足仮面 ひとつとせはひとつ、ふたつとせはふたつ、みっつとせはみっつ、みっつうけとれ。よっつとせはよっつ、いつつむっつななつとせ。ななつ、やっつとせ。ここのつ、とおとせ。ひとくくりとせ。ひとくくり、ふたくくり、みくくり、よくくり、ごのろくななくくり、まるっとくったよ。
オリッ広大 あーった、こいつ。よく数えたな。それだけ食って他の物はないな?それにお前もう食えまい?
足仮面 そうでもないさ。おいらぁにわとりとっつかまえてくい、うしとっつかまえてくい、ぶたとっつかまえちゃぁおいのりあげてくらしたよ。
オリッ広大 その告祀(コサ)いっぱつあげてみな。
足仮面 トントドック、トントドック、いっぱつたたきな。

楽士席で杖鼓と太鼓でクッコリ長短を叩いた。

コサ、コサ、コサでござい。チョンゲ(千界)オジャ(馭者)とちきゅうがまだですな、さんさいもんだいこのあとにチョンファン(天皇)さんてんかをしたててチファン(地皇)さんちかをしたて、テホボッケ(太后福喜)さんやらヨムジェシンノン(炎帝神農)さんやらファンチェホノン(皇帝古銭)さんやらよ。ホノンさんはふねをあつめクァンハ(光河)をとおって、チェヨドダンさんやらチェスニュオさんやらよ。チェスニュホさんはヤクサン(薬山)ではたけをすきおこしごこくひゃっか(五穀百果)をたいらげて、もみがくえずにうすきねついて、ひとでにしりあいいっちょうあがり、がつんとついて、たまいろにしよう。ファドクさんがひをたいてインファンさんがうらがえしためしをぎんぼんにのせ、せんぞにまつったあとにやく(厄)のながれをとってみた。しょうがつにめしあがったやくはにがつにさえふさぎ、にがつにめしあがったやくはさんがつみっかにさえふさぎ、さんがつにめしあがったやくはしがつようかにさえふさぎ、しがつにめしあがったやくはごがつたんご(端午)にさえふさぎ、ごがつにめしあがったやくはろくがつユード(流頭)でさえふさぎ、ろくがつにめしあがったやくはしちがつたなばたにさえふさぎ、しちがつにめしあがったやくははちがつチュソク(秋夕)でさえふさぎ、はちがつにめしあがったやくはくがつここのかにさえふさぎ、くがつにめしあがったやくはゆたかなじゅうがつにさえふさぎ、じゅうがつにめしあがったやくはとうじ(冬至)のしるこでさえふさぎ、とうじづきにめしあがったやくはおおつごもりの、しろいきりもちでさえふさぎ、しょうしち(正七)がつ、にはち(二八)がつ、さんく(三九)がつ、し(四)のじゅうがつ、ご(五)のとうじ、ろく(六)のしわすが、ずうっとめぐってたいへいか(太平歌)をうたいつつ、どのどう(道)もまもりをといてくらおうよ。うえのかいはさんじゅうはち、なかのかいはにじゅうはち、したのかいはじゅうはち、みぎのまんなかはおとこのまもり、ひだりのまんなかはおんなのまもり、わざわいをおとこのまもりへ、しっかりたらふくくってとおくへでかけるのさ。おいらぁわらってえいがをきわめ、おまえはかけずりまわってテンカンしちまえ。
オリッ広大 やあ、いんま、時間がもうねえ、みんな終わらせて、珍島アリランひとくさりやってみい。

楽士席で太鼓長短をはじめ縦笛、横笛、胡弓、杖鼓、伴奏が鳴って、足仮面が珍島アリランを唄った。オリッ広大は走り回って合いの手を入れた。

聞慶(ムンギヨン)の とりのとうげは なんてえ とうげだ まがりくねって ないちまう
(繰り返し)アリアリラン スリスリラン アラリガ ナンネ。アリラン ウンウンウン アラリガ ナンネ
みつめる 万壑(ばんがく)は 千峰 おれて みりゃ 白砂地よ。(繰り返し)
あなたが しんで 極楽に いけば わたしの からだも ついていく。地蔵菩薩(繰り返し)
はしを ゆくなら わたしも はしを ゆく。わたしの あなたの あとついて わたしは ゆく。(繰り返し)
かたきや あくまや この あくどい やつらめ。いきるもん しぬ ならびは なんだか しらんわ。(繰り返し)
やつの むすめ。めを ちょいと みて。うすめばかり あつく ふるえながら しぬよ。(繰り返し)
なぜ きたの、なぜ きたの、なきながら いく みちを なぜきたの。(くりかえし)

オリッ広大 あーった、あいつ、よく唄ったもんだ。やたらと食うってのももう沢山だ。やあお前、みんな食って食うもんももうないわい、トッペギ踊りひとくさりやって挨拶しな。

楽士席で風楽吹くと足仮面がトッペギ踊りを踊った。ひと通り済むと足にはめた仮面をぬいで立ち上がった。仮面は手に持ち客席に向けて挨拶した。
終わりに罷讌曲(パヨンゴク)(罷讌曲のひととき。北斗七星がすねている。雑用係は雑用をなさり、元気のいい人が送っていった。童子は沓を並べて、忙しいよと言っている)あるいはつっかけ放蕩歌(シンナンボンカ)などを楽士に合わせて唱い、客席のお客さんたちは席をあとにした。
 











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