再聴279：PHIL SPECTOR

フィル・スペクター（Phil Spector）はアメリカの音楽プロデューサー。彼自身が歌ったりする訳ではないけれど、彼の作り上げたサウンドはやはり抗しがたい魅力に溢れている。

彼の作り上げたサウンドは「ウォール・オブ・サウンド」と呼ばれていて、僕もきちんとは説明できないのだけれど、とあるサイトから引用すると「広くないスタジオに沢山のミュージシャンを詰め込んで、同じパートの楽器の同じフレーズを複数人同時に演奏させたりして、そしてそれらを一斉に一発録りする。そうやってできたサウンドを、エコーチェンバー(残響室)を通して再録音することでエコーを掛ける」ことになる。一つ一つの音が分離良く聞こえてくるのではなくて、一つの大きな塊として迫ってくるって感じだろうか。だからステレオではなくてモノラルで聴くのがベストかと思われる。僕が持っている彼の仕事を総括したようなCDボックス物のタイトルも「Back To Mono (1958-1969)」となっている。

もう一つ、彼を有名にしたのは、ビートルズの「Let It Be」をプロデュースしたことだろうと思う。賛否はあるけれど、ジョン・レノンに言わせれば「ヤツはいい仕事したと思うよ。少なくとも聴いていて反吐を吐くことはなかったから」ということになる。褒めているんだかけなしているんだかわからないけれど、ジョンもジョージも解散後にフィルにプロデュースを頼んでいるので、それなりに感触は良かったんじゃないのかなと思う。まあ、ポールはフィルのことが大嫌いだろうけれど。

人間的にはとても変人だったらしく、ラモーンズのメンバーやジョン・レノンに対してピストルで脅しをかけたり、自宅の部屋でピストルを撃ちまくったり、あげくの果てにラナ・クラークソンという女優を銃殺した容疑で逮捕されたりしている。結局、彼は第2級殺人罪で有罪となって、禁固19年の刑を言い渡された。そして昨年（2021年）1月16日、新型コロナウィルスに感染、合併症を発症して刑務所から病院へ移送。その移送先で死去。享年81歳。

Be My Baby / The Ronetts

Da Doo Ron Ron / The Crystals

He’s A Rebel / The Crystals

You’ve Lost That Lovin’ Feeling / The Righteous Brothers

Rivers Deep, Mountain High / Ike & Tina Turner

I Love How You Love Me / The Paris Sisters

Spanish Harlem / Ben E. King
＊スペクターは作詞作曲に参加。プロデュースはスペクターの先輩にあたるジェリー・リーバーとマイク・ストーラー。