本作は“完璧”な続編だ。“完璧”の言葉のなかには大抵の「ポジティブ」と少々の「ネガティブ」 *1 双方の意味があるが、とにかく86年の『トップガン』の後日を描く作品としては“完璧”な続編である。
空軍伝説のファイターパイロット――ピート・“マーヴェリック”・ミッチェルはいまだ現場へ残り続ける。
そのマーヴェリックはあること *2 をきっかけにふたたびトップガンへ戻る。困難な任務達成に“伝説”は若き教え子のトップガンとふたたび大空で戦う。
ストーリーのシノプシスははっきりいって前作と同様だ。
起承転結 *3 の「起」がトラブルでマーヴェリックがトップガンへ派遣される。「承」はまさしくも仲間と一緒に飛行技術を学び交流する。「転」はマーヴェリックが現場からはずれるが復帰する。「結」は興奮の空戦を行いわだかまりを解消する。
「この構成」をあえて選択した制作には最大の賛辞を送る。
本作は『トップガン』の続編。前作を見たジャスト世代へ贈る物だ。かっこいいトム・クルーズ、アメリカ空軍、ファイターパイロットにみんなが憧れたのだ。
それをやらずして「なんの続編なのか?」
もちろん1本の映画として観たとき都合の良い部分は多い。
前作から36年が経過したのに“無敵”もすぎるマーヴェリックの飛行技術。登場するべきだが第5世代の最新鋭戦闘機を撃破する映画のアイコンF14。
でもいいのだ。
それこそ前作を見た世代へのアンサー。最適解である。*4
※1 冷静に見た本作は前作のリフレインにすぎない。でもおもしろい。くやしい。
※2 マーヴェリックは極超音速飛行試験機「ダークスター」――この試験機のモデルは“SR-71 ブラックバード”だが実際にロッキード・マーティンに存在する開発部門スカンクワークスがマッハ10で飛行可能な試験機モデル(本機)をデザインした――を空中分解させてしまう。この冒頭の場面は荘厳といっていいほどストイックでうつくしい。空を飛ぶことへと人生をかけたマーヴェリックの生き方を表現して作品をひきしめる。
※3 以下のとおり(マーヴェリックの状況)
起
前作:クーガーの自主退官のトラブルがきっかけでトップガンで訓練を行う。
本作:試験用飛行機をうしなったトラブルでトップガンで教鞭を執る。
↓
承
前作:トップガンで同期と訓練を行う。ビーチバレー。
本作:トップガンで教え子と訓練を行う。ビーチフット。
↓
転
前作:相棒だったグースの死亡でトップガンとパイロットから身を引こうとする。教官ヴァイパー(前作のマーヴェリックのメンター)が復活をたもす。
本作:教え子の所要練度が不足し教官から解任されてしまう。海軍大将アイスマンと元恋人ペニー(本作のマーヴェリックのメンター)が復活をたもす。
↓
結
前作:艦船援護に出撃。空戦。アイスマンとわだかまりを解消する。
本作:ウラン用濃縮プラント破壊に出撃。空戦。ルースターとわだかまりを解消する。
※4 その証拠は明白だ。だってヒットしちゃったろ。世界興収は10憶ドル間近。国内興収は20年以来の実写映画で最大の60憶。公開4週でこの人気ならば、おそらく国内80憶は達成可能。もしかすると『アラジン』以降の洋画100憶もいけるかもしれない。
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