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2021年09月10日21:35

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大西洋、謎の艦影

を読んだ。ダグラス・リーマン著。高永洋子訳。
 1941年、スカパにて。英国海軍リンゼイ中佐は、婦人部隊員の運転するハンバーにて突堤に送られ、そこから内火艇に乗り移ってベンベキュラ号に乗艦した。
ベンベキュラ号は老朽客船を改造した武装商船巡洋艦で、乗員たちの内正式な海軍スタッフはほんの一部で、残りは商船時代のクルーたちと、新兵訓練所を出たての素人たちで占められていた・・・。

 ボライソー・シリーズの著者が別名義で書いている第2次大戦時を舞台にした作品の1つ。
非常に読み応えがあり、面白かった。
「女王陛下のユリシーズ号」を読んだときに、もっと心理描写があればもっと盛り上がっただろうと思ったのだが、本作では心理描写が非常に多い。
冒頭のリンゼイ艦長を突堤まで送り届けた婦人部隊員の心理描写まで挟まったのにはびっくりした。
おかげでキャラクターは覚えやすく、戸惑うこと無く読み進めることができるが、やはりテンポは少し落ちる。
心理描写が少なくテンポがいい作品と、逆の作品ではどっちがいいのか悩ましいところである。
しかし本作はそういう積み重ねが後半に効いてきて、ゆっくりとだが確実にヒートアップしてゆく面白さがあった。
特にお気に入りはベンベキュラ号副長のゴスで、彼はベンベキュラ号が商船だった頃からの筋金入りで、船への愛着が人一番強い。そしてその愛着は巡洋艦ではなくあくまで商船としての彼女に対するものなので、商船としての形跡を消し去ろうとするリンゼイの存在が気に食わないのだが次第に・・・といういかにもなパターン(笑)
そして主人公のリンゼイだが、冒頭から心が折れまくり(笑)なのが斬新で、どんな不幸が待っているのかと思いきや、意外にメロドラマに突入したりもする(笑)のが興味深い。
 上でも書いたが、武装商船巡洋艦という設定の面白さに改めて気付かされたというところもあった。なんとなく商船を強引に軍艦に改造した船というイメージはあったのだが、その乗員まで引き継いでいるというのは、考えてみれば当たり前だとも思うのだが、新鮮で面白いと感じた。
 物語としては何度か哨戒任務や輸送船団の護衛任務につくベンベキュラ号の活躍を描くわけだが、極寒の海域から南洋まで幅広く航海するのが興味深く、最後は壮絶な戦闘に突入していくわけだが、特に目新しいところがあるわけではない。
ただし前述の通りキャラクターの書き込みはなかなかのものだが、戦闘シーンは結構あっさりとしていてその描写が盛り上がるというところはほとんどない。
このへんは好みの問題かもしれないが。
 総じては最初から最後まで丁寧な作り込みで飽きさせずに楽しめた。
ただし邦題には非常に不満がある。タイトルから想像される内容とは全然違う上に、おもしろそうじゃない(汗)
原題は「rendezvous-south atlantic」で、こっちも悪くはないがもう一つ(笑)とも思えるのだが、rendezvousには複数の意味が込められているのがわかる。
化夢宇留仁なら「大西洋の邂逅」とでもしたと思う。
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