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2021年08月02日21:57

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台湾産傑作ホラーゲームと映画版を両方レビュー!「返校」

ゲーム版「返校」は、結構前から気になっていたゲームでした。
グラフィック等から忌まわしさが全開で、内容については詳しく知らなくても、絶対プレイしたいと思わせるものがあったのです。

それが、実は世界中でヒットした台湾産ゲームで、しかも本国では映画化され、これもまた大ヒットしたという超人気コンテンツだったと知り、驚きました。
ようやく日本でも映画版の公開が始まり、switchではそれに合わせてゲームが半額でダウンロード購入可能に!

そこで、ゲームをクリアしたその日に映画版を劇場で観るという挑戦をしてみました。
ゲームは当日中にクリア出来るか分からなかったのですが、どうにかなりました。
結果的にはどちらも傑作!
まずはゲームの感想からです。

「返校」は、比較的オーソドックスなホラーアドベンチャーゲームです。
かつてプレイステーションで発売された「トワイライトシンドローム」に近い、横スクロール画面です。
自分で攻撃等は一切出来ないため、幽霊から逃げるしかない点は「クロックタワー」を思わせます。
また、前半は普通のホラーアドベンチャーですが、後半は主人公の精神世界の闇に潜っていくという「サイレントヒル」的展開(ゲーム製作者も影響を受けたと語る)となっており、非常に日本のホラーゲームからの影響の強い作品と言えます。

一方、非常に独自色の強い面もあります。
それが台湾の文化や歴史を全面に取り入れているところです。
特に宗教的な部分、そして世界的にはあまり知られていないものの、本国では多くの人のトラウマとなっている白色テロ(中国国民党政府が反体制派に対して行った政治的弾圧)を背景にしている点が注目され、政治的なゲームとしても知られているそうです。

実際にプレイしてみると、そういう部分はあくまで背景であり、印象的なのは圧倒的に忌まわしく美しいグラフィックと、怖さを煽る音響、そして巧みに不安感と恐怖感を煽る演出の素晴らしさです。
特に、ラジオを使った演出が秀逸でした。
ゲームとしての難易度は押さえられているため、ボリューム自体は少な目(3〜4時間程度でクリアできる)ですが、その体験は非常に濃厚で、物足りなさは一切ありません。

そして、なにより強調したいのは、ウルトラ胸糞なストーリーです。
カロリーゼロ、糖質ゼロ、救いゼロのウルトラ悲劇に打ちのめされること必至。
エンディングは2つありますが、どちらもストーリーは変わらず、いわゆる「グッドエンド」はエピローグの追加(しかし重要)といった具合で、あまり救われませんでした・・・。

ちなみに、この制作会社の続編「還願」が中国のイチャモンによって発禁となってしまい、話題になりました。
今はようやく独自ルートでPC版のみ流通がされているようです。
僕は以前、プレイ動画でこれを見ましたが・・・。
「返校」以上の超ウルトラスーパーメガ胸糞な内容で、しばらく立つ事が困難になりました。
しかし、間違いのない圧倒的なクオリティの大傑作。
いずれ家庭用ゲーム機でもプレイできる世の中になって欲しいものです。

そして、ようやく映画版の感想です。
なにしろさっきまでプレイしていたゲームですからはっきり言えるのですが、滅茶苦茶再現度が高い!
しかも、ゲームで出てきたシーンがこれでもか、これでもかと大量に登場するのです。
これは誇張ではないのですが、先に映画を観ているとゲーム攻略に役立つほどです。

役者もイメージを壊さない人ばかりで、特に主役の女性が素晴らしいです。
ただの美人じゃダメなのは、内容を知れば明らかなのですが、絶妙なメンヘラ感、不安定感を生まれつき持った方をキャスティングしていて、実にナイスです。

ところで、なぜかこの映画のプロモーションでは、この映画を「ダーク・ミステリー」とか言って、全然ホラーとして紹介していないのです。
映画ではホラー要素を無くし、まったく別の話として作られたのかな?と思っていたのですが、ご安心ください。
ガチホラーです。
序盤から化け物が遠慮もせずに登場します。

ホラーって、売り物になりませんかね?
「台湾からやって来た、鬼畜トラウマ系ホラー!あなたは最後まで意識が保てるかな?」とか言って紹介した方が絶対良いと思うのですが。
「犬鳴村」や「事故物件」みたいな「ホラーかと思ったら別の何かの出来損ないだった」映画よりも、ずっとホラー的満足度の高い作品だと思います。

ゲームは抽象的な表現が多かったのですが、映画では色々と具体的に描かれるので、ゲームでよく分からなかったという人には色々補完できると思います。
特に政府による言論弾圧の部分は、背景として使われていた程度のゲームよりも多くの時間を使って描かれています。

日本でもかつてそんな時代があったので、理解しやすいと思います。
作家の江戸川乱歩や横溝正史も、好きな小説を書いたり出版したりする事が出来なかった時代があり、不本意に戦争翼賛小説を書いていたという過去もあるのです。
純粋に書きたいものが書けず、読みたいものが読めない時代は地獄です。

この映画では、学生が発禁本を読んだだけで逮捕され拷問を受けるという、なんとも酷い状況が描かれます。
ですが・・・。
今の時代、世界中でまたこういった独裁政治が勢いを増しているような気がします。
どこの国にもこういった政権を支持する層が一定数いて、ネットを通じて勢力を強めている節が見受けられます。

我が国日本の現状については・・・。
正直あまり語りたくないほど悲観的な気持ちですが、マリオやパンケーキがこの映画を観たら「昔は良かったな!美しい国を取り戻そう!まずはうるせぇ国民共から人権の剥奪を!家畜は餌だけ食え!」と元気になる事、間違い無しでしょう。

ゲームでのウルトラ鬱な後味は、映画では少し変えてあります。
基本の話は同じなのですが、エピソードを加えたりする事で幾分マシになっていて、なかなか感動的になっていると感じました。
ゲームでは序盤と最後くらいしか登場しなかった少年の存在を主人公レベルにしたのも、うまいバランスになっていると思います。

ゲームが先か、映画が先か。
角川映画じゃありませんが、未体験の人にはどちらでもオススメ出来る作品だと思います。
夏にはやっぱり鬱ホラー!
五輪に飽きたら是非、お試しください(ゲームは体験版もあります)。

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