恩田陸というと、俺が20代から30代にかけて、一番好きな作家のひとりだった。
当時は新作をみかけると、必ず買って読んでたんだよね。
院生か学部の後半くらい、本屋さんで『三月は深き紅の淵を』の単行本を見かけ、なんとなく惹かれて、当時は今以上にお金がなかったにも関わらず、買って、夢中になって読んだ記憶がある。
特に最初の話『待っている人々』は、今でもときどき読み返す、俺アンソロジーを編むなら必ず入れるであろう好きな本だ。
それ以前に『六番目のサヨコ』は読んでいたものの、なんとなく勝手に自分がみつけた作家さん、というイメージで楽しみにしていた。
映画化されたり、ドラマにもなったりもてはやされたあと、恩田陸の新作はあまりみかけなくなり、たまにみかけて手にとっても「なんかちがうなぁ」と、離れていった。
俺自身の読書傾向も、30を半ば超えたあたりから新作をみかけたら必ず手に取るのは小説作品ではなく、内田樹や佐藤優といったノンフィクションの系統に変わっていった。
評判になって映画化もされた『蜜蜂と遠雷』は単行本で買って、本だなにあるんだけど、文庫化された今もまだ読んでいない。
読書記録をみたら、いっとき小説は数ヶ月読んでいないとか、一ヶ月に一冊程度という時期もあった。今年はハリー・ポッターだとか、少しずつ物語の系統も手に取るようになってきたかなぁ。
最近読んだ佐藤優の『十五の夏』も、回想の旅行記ではあるけど、物語的な要素もないとはいえないと思うし。
また小説を、という気分もあるのか、つい先日も本屋さんでみかけ、なんとなく気になっていた恩田陸の近著『灰の劇場』を買ってきた。
ぱらりらとめくったときに目についた文章に、妙に惹かれてね。
俺は恩田陸の、なにかについての彼女の視点がつらつらと独白的に書かれているところが好きなんだなぁ、と思い出したのだ。
そういいつつ、まだ読めていないんだけど。
ちなみに俺が好きな恩田陸の作品で筆頭にあがるのは「木曜組曲」だ。
「料理が得意という男に、得意料理を聞いてみるといい。茄子とトマトのパスタなんていうようなら信じてはいけない。パスタくらいで、家事に理解があるなんて思われたら困るから」
なんて話が印象に残っている。
そしてつい先日、また本屋さんを通りがかったら、新刊が出ている。
『薔薇の中の蛇』。
三月のシリーズとして、北見隆一氏がイラストを描いている。
一瞬迷ったものの、これは買っておかないとね。
帯に「理瀬」シリーズ17年ぶりの最新長編とある。
タイトルに覚えがあった。ずいぶん昔、小説誌でみかけた記憶がある。いっとき中断して再開し、完結したようだ。
このシリーズも、俺が夢中になっていた当時、恩田陸の柱の一つだったよなぁ。
好きな絵描きさんの表紙とあいまって、これは電子書籍よりも手に取れる本として、手元に置いておきたいと思った。
楽しみに読もう。
近いうちに読めるといいんだけどね。
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