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2021年03月08日13:53

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ブラームスのピアノトリオ第1番@佐川文庫

今朝、FBからのお知らせで、「昨年の昨日と今日、(コロナ禍で興行が中止になった)びわ湖リングを見てたよね」とありました。そうそう、私、ワーグナーの楽劇「神々の黄昏」のライブストリーミングをネットで2日間とも見てたことを思い出しました。もう1年も経ってしまったのか…。このオペラの無観客上演に、ネットでは約37万アクセスあったらしい。すべてが中止という中にあって、文化や経済に“黄昏”を招かないための画期的な無料ネット配信という英断は素晴らしかった。

今年のクラシック音楽事情は、都内ではコロナ感染防止を超・徹底した上で、音楽会の開催も徐々に増えてきたようです。しかし地方ではまだまだ少ないです(嘆)3/6土曜は、私にとって今年2回目の音楽会は室内楽でした。車を飛ばして、水戸の佐川文庫で聴いてきました。

念の為、前日、電話して開催の可否を確認した時、館長さんから「チェロの岡本くんが手の故障で、笹沼くんに代わり、プログラムのショスタコのトリオがフランクのソナタになってしまったけれど、いいかしら?」と言われ、「はいはい!」とは答えましたが、私、結構、落胆しました。ショスタコービチのピアノ三重奏曲第2番は大好物なのですが、なかなか実演を聴く機会が少なく、楽しみにしていたのです。

私が聞こうとしていたミュンヘン留学経験がある若手3人(ピアノ尾崎未空・ヴァイオリン鈴木舞・チェロ岡本有也)によるミュンヘン・トリオの当初のプログラムは
・ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調 Op.11[街の歌」
・ショスタコーヴィッチ:ピアノ三重奏曲第2番変ホ短調Op.67
・ ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番ホ短調Op.11
でした。

岡本氏に替わるチェロの代演は笹沼樹。
最終的な演目は、アンコールを含め、以下のようになりました。
・ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第4番変ロ長調 Op.11[街の歌」
・フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調※
・ ブラームス:ピアノ三重奏曲 第1番ホ短調Op.11
(アンコール)ブラームス:ハンガリー舞曲第6番※

昨年3月に予定していたこの音楽会は、コロナで1年延びました。そして本番5日前に岡本氏から「(手のケガで)駄目かも…」という連絡。中止は避けたいので、なんとかコネを頼りに代演者を必死にあたったそうです。アクシデントつづきでお気の毒さまです。
なんとか実力があるチェリストを見つけ、ピアノトリオのかたちは整えることができました。しかし日数が足りず、難曲のショスタコのトリオを断念したのは、私はガッカリでした。チャレンジしてほしかったなぁ。なぜなら、緻密なアンサンブルに重きをおく常設の弦楽四重奏団とちがって、ピアノトリオという形態はパッと集まって、パッと弾いて終わりという「行きあたりバッタリ感」があっても十分に成り立つと私は考えているからです。むしろ、今回のような非常事態の時の方が、スリリングでおもしろいピアノトリオが聞けるはず。しかし彼らは安全策を選んだようです。まあ、仕方がないか…。

一曲目のベートーヴェンとトリオ、冒頭は慎重な入り方でしたが、音楽そのものがのびやかで素直な曲想だったことが幸いして、合わせやすかったように見えました。急造チームでもそれなりに聞かせてくれたと思います。やる気になれば、ショスタコもできたかもしれません。(←まだ言ってるの?…と言われそうw)

ニ曲目のフランクのソナタ、私はちょっとガッカリでした。この曲はヴァイオリン曲としては大傑作なので、私、いろいろな音楽家の演奏で聴いてきました。この曲の肝である優雅さ甘美さは、この日はあまり感じられませんでした。むしろアンサンブルとして「成り立つ」側に軸足がのっていたのでしょう。慎重に弾かれることで、この曲の本質的なところが失われていました。

三曲目のブラームスのピアノトリオ第1番の実演を聴くのははじめてでした。それだけ演奏機会が多くないのです。ブラームスの最初期の作品ですが、37年後に改訂されました。破棄しなかったということは、おそらくこの曲に愛着があったのでしょうね。作曲された前年、ブラームスは彼の人生に影響を与えたシューマン夫妻に会いました。CDでこの曲をずっと聴いていた私は、音楽の中にこの3人の姿が見え隠れする若きブラームスの音楽というイメージを持っていました。しかし実演を聴いて、別のイメージを抱きました。この曲は、たった3人でオーケストラの響きをつくる音楽だと…。ヴァイオリンとチェロの二重協奏曲的ということではなく、音楽全体が交響曲のような構成感と、響きの厚さが尋常ではないというのがその理由です。シェーンベルクがブラームスの音楽を「簡素、しかし豊か」と評した言葉が、そのまんまこの音楽に詰まっているように感じられた実演でした。改訂版を出した時、ブラームスは4つの交響曲を作曲してしまっていたので、ある意味、私がそう感じたのは自然かもしれませんね。この曲は、若き情熱と経験による熟練がアウフヘーベンした音楽と言えそうです。ショスタコは聞けなかったけれど、ブラームスを聞けただけで、この日、行った価値がありました。

この日のホールは、8割ぐらいの入りで、「密」状態でした。これは想定通り。私は後方の通路側の席をとっていました。その理由は、できるだけ速やかにホールに出入りできるようにするためでした。開演直前の2分前のギリギリに席に着き、休憩時間は車の中で待機して、後半のアンコールが終わったら、ダッシュで会場から離脱。これ、私のコロナ対策。知っている人がたくさんいましたが、あいさつもしないで失礼してしまいました。
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