公開前から、本国版のポスターと日本版のポスターのあまりの違いが指摘されていた映画です。
簡単に言うと、本国版はガチホラーなビジュアルなのに対し、日本版は美少年2人がジットリとした淫靡な雰囲気(個人の意見です)で写っているものなのです。
これが同じ作品のポスターとは・・・。
同じ作品どころか、完全に別ジャンルの映画にしか思えません。
金になるのはホラー好きの黒シャツ共じゃなくて、やっぱり奥さま方だろう。
こんな配給会社の考えもよく分かります。
昼食を抜いて、ためたお金で映画を観に来る連中より、ランチで3000円を惜しげも無く払う奥さま方の方が、ターゲットとしては魅力的です。
奥さまの好きなものと言ったら美少年、それも美少年同士でペロペロする内容なら文句ナシ!ということです。
でも、奥さま方はこの映画、ご満足されたのでしょうか。
始まってすぐ、この映画はオシャレなアート系映画とかじゃ全然無く、B級感がムンムンの好き者向けホラーだという事がはっきり分かります。
君の名前で僕を呼ぶどころか、化け物の咆哮が聞こえてきそうです。
この映画をすでに観た人間の責務として、これは言っておきたいです。
これはガチホラーファンのための映画です!
でも、奥さま方には意味の無い作品かと言うと、そうでもありません。
あのシュワちゃんの息子(男性器の婉曲表現ではない)が、ピッチピチの美少年となって、裸を存分に披露しているからです。
思えば、お父さんもデビュー時は「ターミネーター」や「コナン」で、ほぼ全裸で活躍していました。
息子の初登場はなんと入浴場面。
天国の淀川長治先生も「一緒に入りたい」と喜んでいることでしょう。
シュワちゃんの息子が主人公のイマジナリーフレンド(現実には存在しない、心の中だけの友達)である事は、序盤で強調されます。
ホラーではオチに使われそうなこの設定を、この映画では前提としてまず把握しておく必要があります。
彼は主人公の困った時に登場し、絶妙なアドバイスでサポートします。
言うとおりにしていれば、彼女もゲット、気がくるったおかあさんも静かに出来ます。
考え方もワイルドになり、社交的、行動的な性格になっていくのです。
この辺は大方の予想通りの展開でしょう。
自分の中の別人格というのはこれまでの映画でも散々登場したネタですが、こういうのは決して突飛な話ではないと思います。
僕自分も、子供の頃は人前で何かを話したりする事がまったく出来なかったのですが、今は研修生の前でアドリブを交えつつ業務について長時間話したりという事も、それほど抵抗が無いほどになりました。
もちろん経験もありますが、「こういう時はこんな感じの俺で行こう」という自分の中のチャンネルを次第に増やしていった結果のような気もします。
どんな人間も、自分の中に複数の人格を持っていると思います。
最初はその存在に気付かないものの、何かをきっかけに「こんな面もあるのだ」という事を知り、以降は相手や状況によってそれを使い分けるわけです。
家族といる時、友人といる時、異性といる時、仕事中の時とで、すべて同じ印象を持たれている人の方が少ないと思います。
よく、どれが本当の自分か?という問いが描かれますが、どれも本当の自分だし、どれか一つではない多面性を持っている事が、普通の人間なのでしょう。
これがうまくコントロール出来ている状況であれば問題ありませんが、大きなストレスや過酷な環境によって、感情的であったり暴力的であったり破滅的であったりする人格が表に出る事もあります。
そういう時、自分がどんな人格になるのか。
まだ知らないという人も少なく無いでしょう。
あなたの中のダニエルを・・・。
(以下、ネタバレにご注意ください)
まあ、そんな話だと思っていると、思いきり足元をすくわれて脳天を床に叩きつけられる事になると思います。
そういうありがちな展開を逆手に取った、純ホラー展開・・・。
斬新とも言えますが、一気に幼稚になった気がする人もいるでしょう。
あくまで精神的なものの表現であるという解釈の余地は、一応残されているとは思いますが。
まあしかし、この映画の見所はホラー表現のユニークさでしょう。
主人公とダニエルが同化する時のビジュアルなんか、異様極まります。
色々不可解な部分は残りますが、真面目な考察は完全に無駄になる可能性が高いので、シンプルに「変なホラー」として楽しむのが一番じゃないかと思います。
なにより、シュワちゃんの息子が頼もしくて、今後が非常に楽しみです。
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