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2021年02月28日16:11

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ハイパー不条理グルメリポート!「プラットフォーム」

この映画を知ったのは結構前でしたが、とにかくこのシチュエーションだけで猛烈に観たくなりました。
刑務所の独房の様な場所の真ん中に、大きな四角の穴が存在し、その上下には無限の様に同じ部屋が存在する。
そしてその穴にはエレベーターがあって、上から食事が送られてくる。
当然上の人間から順番に食べるので、下層の人間はその食べ残しを食べるしかない・・・。

そのビジュアルの奇抜さや恐ろしい事が起きそうな不穏な雰囲気が予告からビンビンと伝わってきて、たまりませんでした。
こういう「世界観が出オチ」なシチュエーションスリラーには、設定に頼り過ぎたためにドラマ自体は退屈で、がっかりさせられる事も少なくありません。
でも、とにかく体験する事に意味があるわけで、ありがたい事に静岡でも公開されたので観に行きました。

残念な部分もありましたが、とても面白い作品だったと思います。
残念な部分を先に書きますが、年齢制限を設けてあるにもかかわらず、盛大なボカシが存在することです。
ここまで明らかに意味の無いボカシは、まあボカシ自体が常に意味は無いのですが、トップクラスじゃないでしょうか。
ここにボカシって、何の意味があるの・・・。
その行為自体が問題なら、そこにボカシを入れても誰にでも意味は分かってしまうのだし。
「肉」という映画がR18だったと思うので、きっとそういう事なのだろうとは思いますが・・・。
本当にくだらない!

映画自体は、まずこの奇想設定の説明が序盤にあって、映像でジックリ理解させて、その上でこの設定の中で想定できる様々な行為を、余す事無く見せてくれたと思います。
思ったよりずっとホラーテイストが強く、予想通りブラックな笑いをたっぷり含んでいます。
部屋には常に2人(主人公ともう一人)の住人がいるのですが、この主人公の相手が展開により変わっていくのも、飽きさせない工夫となっています。
定期的にランダムに自分のいる階が変わるだけでなく、能動的に下層や上層へ向かおうとする挑戦も当然の様に描かれ、そんな悪戦苦闘の果てに、次第にこの施設の全貌が明らかになっていきます。

この映画をまだご覧になっていない方にお伝えしたいのは、事前にあまりこの作品のレビューを読まずに観て欲しいという事です。
ネタバレを見るとつまらなくなるから、というのもあるのですが、ほとんどのレビューがこの映画が一体何を意味しているのか、という考察ばかりだからです。
もちろん考察する事は娯楽の一つであり、それ自体を否定する気はありませんが、先にそれを見てすべてが「明らかだ」と分かった気持ちで観てしまうと、楽しみが減ってしまうと思います。

着想の元になったものは、現代社会や宗教的なものから得ているのでしょうが、この映画はただそれを示唆するだけの映画ではなく、きちんとスリラーとして、不条理SFとして、娯楽作品として楽しめる様に作られています。
奇怪な世界に突然放り込まれ、その中でやれる事を尽くそうとする主人公達の奮闘ぶりを、シンプルに楽しんで欲しいと思います。

この作品の物語を小説にしたら、リチャード・マシスンの短編SFの様なものになると思います。
つまり、多くの余白をあえて残してあるのです。
彼の「運命のボタン」という本当に数ページの短編を映画化した際、2時間程度にするために多くの設定を追加しましたが、原作の良さは相当失われてしまいました。
こういう短編は切れ味が重要なので、むしろどこまで削るかが大事なのです。
その点、この「プラットフォーム」は90分程度の映画ですが、説明されない部分、描かれない部分が多く存在します。

終わり方もこれで良かったと思いますが、序盤から料理人の存在が描かれていたので、最後もちょっとだけそこを描いて終わると良かったのかな?と思いました。
彼らはまるで高級レストランの調理師みたいに丁寧な仕事をしているのが、その後の料理の扱われ方を考えると笑ってしまいます。
時折ここを描いたのはどういう意味だったのでしょうか?
単なるギャグだった気もしますが・・・。

今の社会よりちょっとだけ夢のある「プラットフォーム」の世界。
ただ食べて生きていくことが、どれだけ過酷で残酷な事かは「ハイパーハードボイルドグルメリポート」を見れば一目瞭然です。
この番組で紹介された、ゴミ山で生活する少年等がこの映画を観たら、本当に夢と可能性に溢れた世界だと感じるでしょうね。

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