mixiユーザー(id:13333098)

2021年02月21日16:18

124 view

銃火器一切無しの老婆版エクスペンダブルズ!「デンデラ」

この映画は友人に教えてもらってアマプラで観たのですが、最初タイトルを見た時に「ああ、そんなホラーあったな〜。下半身が無い幽霊が追いかけてくるやつだっけ?」と思ったものの、それは「テケテケ」と勘違いしていたようです。
この映画はいわゆる「姥捨て山」伝説の、捨てられた老婆のその後を描いたお話で、なんと捨てられた老婆は死んでおらず、老婆だけ(ジジィは見殺す)の村を作り、かつて自分達を捨てた村に復讐しようとしていた!という荒唐無稽な内容です。

B級映画と聞いていたのですが、役者は浅丘ルリ子に倍賞美津子、山本陽子に草笛光子と、大物女優がズラリ。
彼女たちが、雪がガンガン降りしきる八甲田山の雪中行軍の様なロケを敢行している序盤は、さながらウルトラ大作映画みたいで、一体これはどんな企画だったのかと本当に不思議です。
(今知りましたが、監督の天願大介は「楢山節考」を監督した今村昌平の息子なのだそうです。偉い人の息子パワーか・・・。菅総理の息子と同じだな!)

ところが、熊の登場によりその印象がすっかり変わります。
まだ演技の出来る天才熊はいなかった(いてもオファーできなかった)ようで、しかし「レヴェナント」の様なCGもクリエイトできず、「みなさん、これを熊だと思って演技してください」と用意したぬいぐるみを、結局そのまま映画に採用した様な映像なのです。

サメの様に海の中に姿を隠すという事ができず、むしろ雪の中という一番丸見え状態になってしまう苦しい存在、それが熊。
熊が出ている場面は本当にすべてつらく苦しい感じで、頑張ったよね!という一声を絞り出すのがやっとです。

話は比較的単純で、この捨てられ老婆(老婆のエクスペンダブルズ)に主人公の老婆が助けられ、人数が多くなったのでいよいよ村に復讐するんだと思ったら熊が登場して人数削減、このまま強硬だ!というブラック企業の様な志で村に向かおうとすると今度は雪崩で人数削減され、困ってしまってワンワンワワン、という流れでした。

前半の流れは明快、痛快で盛り上がるのですが、前述の苦しい熊対決以降「これぞ迷走」という後半を迎え、最終的に何だったんだと呆気にとられる結末を迎えるのでした。
女性や老人といった弱者を迫害し、勝手なルールで排除しようとする村に対して怒りの咆哮を上げる部分は、日本の現状を思わせ、そうだ、ブッ殺せ!という気持ちになります。
仕事を失い貧困で苦しむ女性達が、森元会長を襲撃して誘拐、オリンピック会場で貼り付けにし、裸の彼の全身に番号を書いて「人間ストラックアウト」を生配信するという内容で映画化したら、とても楽しい娯楽作品になると思いますし。
エンディングは「悲惨だな、悲惨だな〜!」と泣く森元会長のアップ(監修:稲川淳二)。

あと、そういう反体制組織である彼女の村内でも意見が分かれ、結局理性的な人間よりも感情と怨念を刺激するトランプの様な人間の意見が支持されるというのも、同様に現実を反映していて面白いと思いました。
今も昔も、常にそういうものです。

主人公の老婆は、往年の娯楽映画の主人公同様に、己の道を行くところもまた王道なのですが・・・。
それにしてもこの終わり方は何だったのか。
何か仕掛けがあったのか?と思わずいくつかの場面を観直してしまいました。
ある程度の推測は出来るものの、非常にモヤモヤする終わり方だったのです。

この映画の感想と、さらに原作の感想をネット上で色々と読んでみました。
原作者の佐藤友哉は、メフィスト賞を受賞してデビューした作家で、名前だけは知っていました(のちに三島由紀夫賞等も受賞)。
このメフィスト賞は、一応ミステリー作品を対象にしたものですが、非常に問題のある作品、どうかしている作品こそが受賞するという、かなり特異な文学賞です。
7割は怒るけど、3割は評価するという感じでしょうか。
個人的には受賞作家の中に結構好きな人も何人かいます。

まあ、原作からして困った作品だった事は予想できるのです。
また、原作には疫病が流行るという展開もあって、そこにはミステリー要素があったとか、熊の視点もあったとかで、非常に気になります。
確かに、熊からすれば老婆達は仇ですから、この視点がある事によってより複雑な構造を演出できますが、「私は熊・・・」というのを実写映画でやるのはさすがに無理だったのでしょう。

原作を読んでみないとこれ以上の理解は困難な感じなので、いずれ読んでみたいと思います。
ただ、彼が「憤り、憎悪、鬱屈、焦燥、葛藤といった苦悩を生々しく描写する(ウィキペディアより)」作家であるというのは、大きなヒントになるのではないかと思いました。

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2021年02月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28