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2021年01月11日23:02

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邦画ミステリーの成功作!「仮面病棟」

ミステリー映画のレビューでは何度も書いている事ですが、小説で面白かったものをそのまま映画にしても、決して同じ面白さを得るとは限りません。
これはミステリーに限った事ではありませんが、ミステリーにはどうしても退屈な部分、あらかじめ知っておいてほしい「説明事項」を確認する部分が存在するため、余計にそうなるのです。

かつて、石坂浩二の金田一耕助シリーズを監督した市川昆は、ミステリー的な部分をきちんと活かしつつ、見事に娯楽作品として成功させました。
退屈になりがちな部分をコメディー的にし、ショッキングな映像を挟む事で、映画全体に躍動感を保ちながら、それまでの横溝作品の映画化と違ってトリックをしっかりと描いているのです。
これは、彼自身がミステリーの愛好家で、脚本にも「久里子亭(クリスティのもじり)」という名で参加している事も大きいと思います。
ミステリーとしてのキモというのは、それが好きでない人にはなかなか理解出来ないものなのです。

「仮面病棟」の木村ひさし監督は、この作品の前に「屍人荘の殺人」を映画化しています。
実はこちらの作品の方が実写化は難解な上、設定等がかなりマニア向けな内容なのです。
全体的にコメディタッチな映画で、これは監督の作風なのかと思いきや、「仮面病棟」は終始シリアス。
つまり、内容に合わせて演出を選んでいるようです。
「屍人荘の殺人」をしっかりと描くならかなりの予算が必要となるはずで、これは懸命な判断だったと思います。

その上で、「屍人荘の殺人」では2つの部分においては非常に丁寧に描かれています。
一つは「ミステリーとしての要素」、もう一つは「浜辺美波の魅力」。
映画を観た後、もう一度原作を読みなおしましたが、実に大量のトリックが散りばめられた作品だった事に気付かされました。
映画ではいくつかの重要なトリックのみを選択し、そこについては映像で分かりやすく描いていたと思います。
この辺の取捨選択も上手かったと思います。
浜辺美波が最高なのは言うまでもありません。

今回の「仮面病棟」は、映画を観ただけだと同じ監督だとは思えないほど作風が違います。
ただし、ミステリー作品としての手際の良さは共通しています。
冒頭の説明的な部分は必要最低限にしてテンポ良く進め、すぐに「閉鎖された病院内でのサスペンス」が始まります。
冒頭で事件後における警察での聴取シーンがありますが、ここの内容を頭に入れておくと、より楽しめるかもしれません(忘れても問題ありません)。

マスク姿のコンビニ強盗が、精神病院を占拠する。
坂口健太郎演じる主人公はたまたまその日当直の依頼を受けた医師で、永野芽郁は強盗に撃たれて怪我をした女性。
謎の中心は強盗ではなく、この病院自体である事が徐々に明らかになる・・・。
ネタバレ無しのレビューで書けるのはこのくらいでしょう。

全体としてはミステリーよりもサスペンスの比重が高いため、退屈さは微塵もありません。
しかし、ミステリー的な面白さは至るところに存在します。
一番大きな謎は、実は冒頭にあった事件後の事情聴取で生まれます。
あるヒントのお蔭で、真相が明かされる前に多くの人が気付くと思われますが、これはもちろん意図的なもの。
こういう部分も憎いです。

謎に満ちた病院を探索するシーンもワクワクさせられます。
犬鳴村にもいた高嶋政伸が出てきた時は「ウワッ、ダメかも!」とヒヤリとさせられましたが、こちらでは良い仕事をしていました(似たような役でしたが)。
はっきり言って荒唐無稽で無理のある設定、展開じゃないかと思う方は少なく無いと思いますが、映画なんですから!
このくらい大きな話にしてもらった方が盛り上がるし良いじゃない!という気持ちです。
終わり方も良かったと思います。
ベタベタしたお涙頂戴を偉い人からリクエストされた可能性も大きいですが、そうしなかったのは英断でしょう。

そして、なにより永野芽郁が非常に魅力的です。
監督のこだわりなのでしょうが、非常に重要な部分だと思います。
ここも素晴らしい!

国内外のミステリー的な作品と比べても、非常に良く出来ていると思います。
ミステリーの面白さと、映画にした時に何が活きるかを、きちんと両立できる監督なのだと思います。
「屍人荘の殺人」の続編「魔眼の匣の殺人」も、実写化には非常に困る作品だと思いますが、この監督ならどうにかなると思いますね!
期待しています。

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