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2020年12月07日10:03

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冒頭15分はソリッドなサスペンス、その後は奥さま向けの変態ロマンス!「おもかげ」

この映画の特殊な構成については、事前に説明が必要だと思います。
この作品の冒頭15分は元々独立した短編作品であり、アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされています。
その後、監督が主人公の10年後の物語を作ったものがこの作品の本編となるのです。

小説ですが、湊かなえのデビュー作「告白」も、独立した短編が長編の冒頭となった作品でした。
短編のアイデアを膨らませ、再構成して長編にするというのはよくありますが、短編をそのまま使いながらその後を描いて長編にするというのは、特に映画ではなかなか珍しいかもしれません。

まずこの短編部分の感想ですが、全編ワンカット、母親と息子の電話での会話だけで描かれる恐ろしい悲劇を描いた作品で、とても素晴らしいです。
電話の会話によるサスペンスというと「THE GUILTY」がありましたが、あれよりもずっと緊迫感があります。
役者の迫真の演技により、困惑、焦燥、怒り、絶望がありありと伝わってくるのです。

こうなると、その後の物語ではどのような事が描かれるのか、気になりますよね。
実際にどのような事があったのか調査する内容なのか。
悲劇は終わっておらず、さらなる危機に主人公が立ち向かう内容なのか。
期待するのは大体そのようなものでしょう。

ところが!
もう全然違うジャンルの映画になってしまうのです。
あんなに面白い短編を作った人なら、長編でもコワ面白いサスペンスを作ってくれるぞ!と気前よく出資してくれた方は、完成した作品を観て絶句したのではないでしょうか。
監督は、本当にやりたいようにやりました。
彼女が本当に描きたかった事、それは少年愛を剥き出しにした、変態ロマンスだったのです・・・。

あらすじにもあるとおり、彼女は息子が消えた浜辺の近くに住んでいるのですが、10年後に息子のおもかげのある少年に出会ってしまうのです。
思わず彼を尾行してしまう彼女。
これだけなら、ミステリー作品の冒頭にありそうなものですが、少年はこの尾行に気付いており、後日彼女の元に来て、なんと彼女にグイグイと迫ってくるのです。
殺しに来たのではありません。
子供のくせに、アラフォーの主人公を明らかにナンパしてくるのです!

この筋だけだと、この後とんでもない落とし穴が待っている様に思えますよね。
でも、映画を観ていると分かるのです。
もうこの作品はそういうのを期待するべきじゃない、と。
エロいのです。
この少年の撮り方が明らかに・・・。

そうかそうか!
奥さま御用達の一品か!
俺が観るための映画じゃなかった!

露骨な性描写は無いのですが、定期的に「奥さま!どうぞご覧ください!」とテロップが流れそうなウットリシーンがやってくるのです。
少年、それも自分の息子を思わせる美少年にムラムラしてしまう自分を必死に抑える主人公、しかし奔放に彼女を誘惑する美少年。
これはもう、美少年マニアの奥さまはズギュン!ズギュン!と心を奪われてしまうはずです。
「アラ!あんな事してマア・・・」と、握りしめたハンケチもビッショリでしょう。

しかしまあ、これが性別逆だったらと考えると、ゾッとします。
アラフォーのおじさんが、まだお酒も飲めない美少女、それも自分の娘に似た少女に誘惑され、思わずムッシュムラムラしてしまう・・・。
これだったらもう、気持ち悪すぎてとても観ていられなかったと思います。

一応、悲劇から立ち直るというお話になってはいますが、悲劇を忘れるには美少年とペロペロする事だ!と言われても、全然参考になりませんよね。
ただまあ、やっぱり辛い事を忘れるには「恋とムラムラ」というのは、案外真実なのかもしれません。
しれませんが、現実にはホスト通い→多重債務→母さん助けて詐欺に加担、というのが定番ですのでご注意いただきたいものです。

まったく自分に向けた作品ではありませんでしたが、なかなか楽しめました。
かなりの長回しのシーンが多いのですが、それがどれも面白いのです。
美少年にジットリ迫るシーンだけじゃなく、主人公に訪れる危機や修羅場のシーンもあるので、奥さま以外にも楽しめる部分があります。
少年マニアの奥さま方にはハッキリとオススメできますが、決して真似しない事だけは事前に約束してください。
夢物語でよいのだ・・・。

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