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2020年12月01日22:51

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今年も後一ヶ月…。

11月23日(月)  上野オークラ劇場

「絶頂本番 私のなかの娼婦」(片岡修二)
鬼才・片岡修二の平成2年作品だが、やはり鮮烈だった。不倫の恋で上司に尽くされ、男は会社の金五千万を使い込んでしまう。ヒロイン栗原早記は、ひっそり退職しホテトル嬢となって、男の口座に金を振り込み続ける。ところが、男は妻の実家に泣きつき、窮地を脱するが頭が上がらなくなって、あろうことか、彼女にホテトル嬢をやめるように諭す。佐野和宏が、優柔不断の煮え切らない男を好演する。手段だった売春の目的を喪失してしまうが、そこから行為自体が目的に変貌していく女の鬼気迫る姿が強烈だ。それをがっちり受け止める斡旋事務所の下元史朗の、クールな虚無感が絶品だ。インテリ風を吹かせ娼婦を罵倒しながら、サディスティックに犯す池島ゆたかの客が、彩りを添える。栗原早記はフェースもボディもさして傑出しているとも思えないが、この男優芸達者陣が輝かせて魅せた。この20世紀の頃はピンクに無縁だった私、リアルタイムで接していたら、ベストテン級!とハシャいでいたかもしれない。「ザ・高級売春 地獄の貴婦人」の新版再映。(よかった)

「未亡人下宿?その4 今昔タマタマ数え歌」(清水大敬)
昭和・平成・令和の3部構成、それにしては各時代のキーワードが乏しいなと感じていたら、令和篇でドラマが鮮やかに昭和篇にループする。時代風俗ではなく、ポイントは時の流れだったのだ。こういう因果・人情話をやらせれば清水大敬監督(脚本も)は練達の職人だ。でも、エンディングの自ら歌う自作テーマソングは、悪乗りが過ぎるよね。(まあまあ)

 なお、併映の「息子と寝る義母 初夜の寝床」は「義母尻 息子がしたい夜」の新版再映。


11月25日(木)

kino cinema 立川高島屋S.C.館
「THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女」(バイ・シュエ)
日本旅行で雪に触れたいとか、日本酒を飲みたいとか、仲良し(最後は些細なことで喧嘩したりもする定番)女子高生二人組のはしゃぎぶりが、瑞々しく描かれるが、そこにも社会の影が落とされる。香港と中国本土を越えて通学する教育格差問題、夢はあってもお金はあまりなく一国二制度の間隙をついての「運び屋」としての小遣い稼ぎ。ただ、残念ながら日本人の我々には、国際社会知識としての教養以上の意味合いに乏しい映画ということである。(まあまあ)


立川シネマシティ

「ばるぼら」(手塚真)
手塚治虫の中で異色のダークコミックの禁断の実写化。二階堂ふみ、稲垣吾郎の好演と、ダークなファンタスティック演出を認めるのはやぶさかではないが、やっぱり私はストレートな手塚ヒューマニズムの方が好きだ。(あまりよくなかった)

「STAND BY ME ドラえもん2」(八木竜一)
「ドラえもん」にはタイムパラドックスのネタが多いが、毎度その収束の上手さに舌を巻く。(特に「のび太と雲の王国」なんて一旦は地球壊滅!)今回もタイムパラドックスを仕掛けまくり、これでは収束のしようがあるまいと感じていたが、見事なウルトラC級で着地してみせた。今回気が付いたのは収束にドラえもんポケットの道具効果が、大きく与っているのを再確認した。この逃げでパラドックスをほとんど回収してしまう。もちろん、道具のアイディアが優れ物なのは認める。唯一、幼児期の○○経験を、のび太以外(のび太のパラドックス回収はハッキリ説明あり)の遊びグループがどう記憶していたかだが、しずかちゃん以外は、何の事か理解できないまま、忘れてしまったようである。お婆ちゃんは、多分この秘密を墓まで持っていったんだろう。ジャイアンの音痴ネタを大人になってもポイントに使うのは楽しい。未来が複数あるのは、どうなってんの?の疑義も無いわけではないが、そこは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と同工として許容しよう。(よかった。ベストテン級))

 複雑なパラドックスの回収に穴が無いという点で。今回の「ドラえもん」は
「TENE テネット」と双璧である。共にSF頭が無いと、理解し難いところもあるけれど、「ドラえもん」は遙かに解かり易いのが鮮やかだ。「道具」の駆使という切り札があるせいもあるだろう。一方「TENE テネット」は、時間逆行空間の範囲が曖昧で逃げているところがある。(「映画友の会」二次会ではっきりとその瑕疵を指摘した人もいた)いずれにしても「ドラえもん」恐るべしだ。


11月26日(木)  北とぴあ ドームホール  第748回無声映画鑑賞会
                 1020〜2020 百年前の活動大写真

 無声映画鑑賞会会員歴も20年を越えた最近で、全プログラム3本が初見というのは極めて珍しい。2本は鑑賞会初上映とのことで、覆面番組「名古屋風景」は以前に片岡一郎弁士で紹介されたとのことだが、これも私は初見だった。

「名古屋風景」
「蛙の会」会員で、鑑賞会スタッフでもある樗澤賢一弁士の登場だ。大正から昭和初期の名古屋風景を記録したフィルムで、戦災前の名古屋の貴重な記録である。活弁というよりは、弁士の役割はドキュメンタリーのナレーターといった趣きだが、国会図書館まで出向いて仕入れた豊富な知識を背景に、樗澤弁士は歯切れのいいナレーターぶりであった。(まあまあ)

「キートンのゴルフ狂の夢」(エドワード・F・クライン バスター・キートン)
ゴルフ場に脱獄犯が紛れ込み、キートンをKO、服を入れ替える。そこから、ゴルフ客と脱獄犯が入れ替わり、テンヤワンヤの大騒動。キートン流のナンセンスとはいえ、服だけで人間が入れ替われるはずもなく、ちょっと無理筋と感じたが、タイトルどおりのオチなので、これで良しとしよう。(まあまあ)

「モヒカン族の最後」(モーリス・トゥルヌール クラレンス・ブラウン)
英仏の列強がアメリカ大陸に進出し、ネイティブアメリカンの部族対立に便乗して勢力争いに至る。砦を中心とした争いや、クライマックスの断崖における決闘は、歴史に残るスペクタクルとして、見応え十分だ。ただ、前者は戦争というより一方的大虐殺に近いし、後者も悲劇的結末となって、題材の持つ暗さは如何ともし難く、後味はよくない。それでも、滅びゆく物への挽歌という魅惑で、ギリギリでエンタテインメントになっているのは、サイレント黄金期ならではだ。愛する男女が、手を握り合って死への旅路につく悲愴美は、後の「死の谷」「白昼の決闘」の原点でもある。澤登翠さんの活弁は、ラストで歴史の悲劇と平和への祈りを朗々と謳い上げ、映画の感動をブローアップさせていた。(よかった)



 11月を終わっての今年のスクリーン初鑑賞作品は173本。

 1年の11/12が終わり、残すところ後1ヶ月。私のベストテン候補の日本映画は「スパイの妻」「生きちゃった」「STAND BY ME ドラえもん2」と11月で一気に3本増えたが、外国映画は10月19日(月)の「死霊魂」を最後に足踏み状態。ミニシアター系で多彩・多数の外国映画が公開されているから、私の眼に触れていない傑作が、多分潜んでいると思う。外国映画の傑作にも、もっと出会いたいものである。

 11月の万歩計累計330,033歩(日平均11,001歩)

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