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2020年11月16日05:48

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民族の願いを泣き笑いと共に

☆文学座公演 『 五十四の瞳 』チラシ&パンフレット

紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて。
作:鄭 義信 / 演出:松本祐子

タイトルの「五十四の瞳」は、いうまでもないけれど壷井栄の「二十四の瞳」からインスパイアされたもの。
こちらは敗戦2年後以降の兵庫県の瀬戸内海に浮かぶ西島にあった朝鮮学校が舞台で、ここには日本の子供たちも通っている。

GHQ、日本政府、朝鮮戦争で南北に別れてしまった民族、北に旅立つ同胞…。
キャストの配置とコミカルなセリフが絶妙で、やるせない出来事に泣かされながら、その合間にずいぶん笑った。

私が通った小中学校は都会にあったし時代も少し違うけれど、日本、韓国、北朝鮮の子供達が机を並べる環境だったので、あれこれ思い出し、共感し、あるいは反駁しながら、複雑に心と頭を掻き回されて、実に印象深い作品だった。
関西以西出身者の多いキャストで、気持ちの悪い関西弁に苛立つこともなく、その点も個人的には非常に鑑賞の助けになった。
今年一番(と言っても今年はほとんど観ていないのだが)ダントツで素晴らしい作品、観に行って本当に良かった。

鄭 義信さんがかつて所属した劇団「新宿梁山泊」、
当時彼は座付き作家であり、出演者でもあった。
その頃の作品で衝撃を受けたものもあるが、今思えばあの頃の作品は余りにも劇的過ぎた。
今、彼の作品は円熟した。
感情に闇雲に訴えかけるのでなく、史実を観客にしっかり与え、考えさせる。
とてもわかりやすくて説得力がある。
押し付けがましさも無い。
観ていて心が打ち震えるような状態になるが、それでも、相反するようだが、どこか淡々と史実を伝えてくる。
その時代、そこに、確かにそんな生き方を選んだ人がいた。
愚かさ、向上心、時の政治背景、たくさんの無残と悲哀。
時に滑稽、けれど人は瞬間瞬間を一所懸命に生きている。
思いが無残に打ちのめされ、政治の暴虐に苛まれて、様々諦めながらも生きて行く。
深い哀しみから立ち上がる人間の強さに感動した作品だった。
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