旅の三日目は、雲仙温泉から諫早・佐世保をすり抜け、平戸島の北側に位置する生月を訪ね(約150��)、平戸市内をウロキョロし佐世保泊。
翌四日目は、大村湾北端から西彼杵半島に入り、西海市から海岸沿いに南下、長崎外海(そとめ)地区にあるキリシタン関連の教会や遠藤周作文学館を訪問、夕刻前、長崎空港から九州を脱出。
平戸・生月では、他所に先駆けてキリシタン信仰が広がり他所に先駆けてキリシタン弾圧が始まったようだ。平戸の大名松浦隆信は南蛮貿易の拡大を考え1550年ザビエルに布教の許可を与えた。しばらくして生月島では、生月を支配していた隆信の重臣がイエズス会のガスパル・ヴィレラらを使って住民の一斉改宗を図ったとか。がしかし、ポルトガル船の港が平戸から長崎に移ったことやキリスト教に寛容だった松浦隆信の死後、弾圧が始まった模様(理由は、息子の鎮信は秀吉・家康と近かったからかも知れないし、或いは彼自身出家して法印を名乗る熱心な真言宗徒であったからかも）。
生月島の高台にある山田教会には、生月で発生した悲惨な弾圧を記録する碑があった。（生月の総奉行西玄可(ガスパルから洗礼を受けたのでガスパル西と呼ばれた)は多くの信者の世話をしていたが、妻・長男と共に斬首され、生き延びて後年マニラで司祭になった次男西六左衛門(聖トマス西)は帰国後長崎西坂の丘で何日にも渡る穴吊りの刑で刑死、三男もまた聖トマスをかくまった罪で刑死したとか。
平戸市内にもどりオランダ商館通りなどを散策しザビエル記念教会を訪れた後、田平教会に立ち寄って佐世保に引き返すことにした(残念ながら藩主松浦家の史料博物館は門前に立っただけで終わった)。
旅の最終日は、西彼杵半島を北から南下、西海市をぬけて外海(そとみ)の大野・出津・黒崎の教会を訪ねた。
国道筋から少し山側に入った静かな地に大野教会は佇んでいた。無人かと思われたが地元の人が現れたので、少しくお話を聞かせていただいた。大野教会のある集落の潜伏キリシタンは、その昔平戸生月から弾圧を逃れ移り住んだ人々だとか。
黒崎は小説『沈黙』の舞台になった地で、遠藤周作文学館が外海に面して建てられている。私奴にとっては深刻難解な小説家の遠藤周作より、もっぱらグータラの狐狸庵先生の方が近しいと思っていた。
館内に遠藤周作の短いエッセイで、「明日できることを、今日するな」との一文が掲げられていた（かって50代初めの私奴は、狐狸庵先生のお言葉だとは知らずに、この言葉を職場でのモットーとしていた。「労働者諸君、もう夕刻だ。明日できることを今日するなだ。サッサと帰るのだよ、ではお先に」てな感じ)。
多分、このセリフどこかで読んで頭に沁みついていたのだ、妙に懐かしかった。
館の一角に「アンシャンテ」との名の思索空間があり、魅力的な中年の女性が「ドーゾ、お入りください」と笑顔で言った。しばらく雑談。外海が一望できて実に素晴らしい部屋だった。
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