日曜美術館「楽園を求めて〜モネとマティス」を見る。
「生きるとは,病院に入っているようなものだ。
ここではないどこかへ−」
〜ボードレール「パリの憂鬱」
印象派の巨匠モネと色彩の魔術師マティス。
ともに後半生、人工の「楽園」を作り、その中に籠って絵を描き続けた。
近代化による社会の転換期。
そして相次ぐ戦争やスペイン風邪などの疫病。
人々は,存在の基盤そのものを揺るがされ,人間阻害にさいなまれる。
芸術家たちもまた,自らの理想,「楽園」を求め「ここではないどこか」にあるものを求め続けた。
モネはパリ郊外ジヴェルニーに,花と水に囲まれた自宅兼アトリエを
マティスは陽光あふれる南仏のニースに,自分の好きな壁紙や装飾,自らデザインした衣装をまとったモデルを配置した部屋を。
ゴッホは日本の浮世絵の世界を錯覚し,アルルでその再現の理想郷を求め
一時ゴッホとそこを共にしたゴーギャンは,それから離れ南国タヒチへ。
世界を「自分の好きなもの」に囲まれた空間に再構築したのだ。
ある意味では,「オタク部屋」とさほど変わらない。
私たちが芸術に接するとき,
彼らが望み,憧れ,築き上げ,そしてすみかとしたその空間「ここではないどこか」へ,私たちもそのご相伴にあずかるような,足を踏み入れるような感覚に入っていくのだろう。
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