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2020年03月21日01:15

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河原のかはたれver.1.4(前半)

さや もっと大事なことやればいい。
ナギ そうか。
さや 状況は日々変わっていくんです。
ナギ まあね。
さや ごまけるし。
ナギ ごまけるって言うな。
のあ なにやるの。
さや そして一年後――。MM88(ハチハチ)菌は、依然として地球を占領し、人々を氷の大陸に閉じこめていた。はい籤。こんだ全員です。
全員 また籤か!(籤引きする)
ナギ あ、当日参加の方もこのシーンですー。夏水さんアシストお願い。
夏水 あい。
さや 62'00"から。
米大統領 私がおこなったことと違うどんなことできたろう? どんなことが。
共和党主 雪が降るといい。時間を稼げる。(咳き込む)
米大統領 どうして?
共和党主 ウィルスは低温では毒性を失うと博士がいった。(咳き込む)
大統領 雪など降りはせぬ。それに、もっと…極寒にならねば…。(気づき)――南極だ。
共和党主 (すぐ)パーマー基地だ。
大統領 (電話に飛びつき)誰かおらぬのか。
交換手 (はげしく咳き込みながら)Yes, Mr.President.
大統領 パーマー基地を。
共和党主 (無理に立ち)雪と氷に閉ざされてる。すぐ飛んで行きなさい。向こうは安全だ。
大統領 「我々は」これで助かる。
共和党主 あなたが行くのだ。あなたは、わが国を…代表している。政府を存続させるんだ。(はげしく咳き込んで死ぬ。手から聖書が落ちる)
交換手 パーマー基地が出ました。
大統領 (毛布を脱ぎ捨て)パーマー基地。米国大統領だ。
コンウェイ コンウェイ隊長です、閣下。
大統領 私のいうことを基地の全員に聞いてもらいたい。そこはまだ病菌に侵されていないか。
コンウェイ まだ兆候もありません。
大統領 ほかの基地は?
コンウェイ どの基地にも患者は出ていません。絶えず連絡をとっております。そちらの状況は?
大統領 各国の基地にもつないでくれ。
コンウェイ 全基地にですか?
大統領 全基地にだ、コンウェイ提督。
コンウェイ すぐ、つなぎます。
―― ソ連・ミールヌイ基地。「各基地に緊急連絡! 米国大統領が全南極基地に呼びかけています」。
―― チリ・フレイ基地。「各基地全員必ず聞いて下さい」。
―― 日本・昭和基地。「大変残念なことであるが、合衆国政府を代表する立場で、私は諸君がすでに知っていることを確認する」。
―― フランス・デュルビル基地。「全世界が――恐るべき疫病に襲われている。我々は、まだ効果的なワクチンを作り出せない」。
―― アメリカ・パーマー基地。「米国は大きな被害を受け、犠牲者は莫大な数に上ってる。被害を免れた国は一国もない」。
―― ソ連。「我々が得た知識によると――零度以下の温度になると――このウィルスは活動を停止する」。
―― 日本。「それゆえ、南極にいる諸君は侵されていない」。
大統領 諸君は、その聖域を離れず、外部から来る人間を入らせてはならぬ。戻ってきてはならぬ。私は諸君に何の希望も与えることができない。ただ、願わくば――何としてでも生き残っていただきたい。人類の未来のために。お願いする。神が諸君をお守り下さるように。(電話切り、咳き込み、泣く)
―――
さや 続いて100'00"から。
マサオ お呼びでしたか。
コンウェイ マサオ君。入りたまえ。問題が持ち上がってる。この図を説明してほしい。
マサオ 心覚えなので。
コンウェイ 我々にわかるように話してほしい。
マサオ このボルチモア・キャニヨンでは――海中油田の試掘がなされていました。私は地震予知が専門なので、この状況に大いに興味をひかれました。
ロペス だが地震地帯ではないだろう。
マサオ その通りですが、私が大いに関心を抱いたのは――海底石油が採掘された時に起こることです。海水の巨大な圧力によって、大規模な地殻変動が起こるおそれがあります。ボルチモア・キャニヨンとアパラチア岩層の間にひじょうに急角度の傾斜があって、きわめて危険な状況が予想されます。
ボロジノフ 地震が起こればどのくらいの大きさだろう。
マサオ リヒター・スケールで8.6から9でしょう。
コンウェイ 震源地はここかね。
マサオ ここから半径100マイル以内です。
コンウェイ ワシントンが影響を受けるね。
マサオ Yes.
ボロジノフ あんたにお尋ねしたいが、核爆発ほどの大きさだろうか。
マサオ 急速な垂直型の震動によるショックは――核爆発による衝撃波とよく似てるでしょう。(戸惑い)しかし地震が起こるのは東部海岸地帯で、南極ではありません。
コンウェイ いつ頃起こるだろう。
マサオ 一ヶ月以内に。
コンウェイ (間)カーター少佐。皆に話すべきだろう。カーター少佐は国防省情報局の参謀を勤めて、統合参謀本部の連絡官だった。
カーター 米国はARSという報復ミサイルを持ってます。自動的に反応するのです。マサオ君がいった大きさの地震が起こると、ARSを作動させます。米国の国防施設は――英国の国防施設と密接に関連してます。キャプテン、そうですな。
マクラウド 少佐のいった通りです。昨年9月ネレイド号でARS作動のシグナルを受領しました。ワシントンも死滅していたはずで、我々は奇異に感じました。
コンウェイ ここで諸君は事実を知っておく必要がある。ソ連関係者から。
カーター ネフスキー大佐。
ネフスキー シュト(што)。最初のミサイルがソ連領土内で爆発すると、全報復ミサイルが発射されます。いつでも作動されるのです。それだけでなく…、
ポーランド代表 何事です。
ネフスキー ここが米国の秘密基地であるという情報が――わが国の軍部に伝えられていて、ここがソ連ARSの目標になってます。
アルゼンチン代表 What?!
どこかの代表 無茶だ。
ネフスキー 愚か者は米国だけにいるのではありません。
ポーランド代表 何ということだ!(机叩き)いつまで過去に脅かされるのだ。
カーター 我々にできることがある。ワシントンに行き作動を解く。
マサオ しかしウィルスが…。
コンウェイ 誰かが行かなければならない。
さや そこで籤引きですよ。
アルゼンチン代表 What?!
どこかの代表 無茶だ。
全員 伏線かよ!
―――
カーター (籤引きの場で、苛々して)提督、バカなことですよ。
コンウェイ YES!! This is STUPID!!
カーター (籤を取りあげてぶちまける)提督。私が行く。(去る)
マサオ Excuse me…(籤を拾いあつめる)
コンウェイ もうよい。カーター少佐こそ適任者だ。
マサオ 助手が必要です。
―――
マサオ (追いつき)カーター少佐。(当たり籤を見せる)
カーター (破り捨てる)まさか、君が…。
マサオ 一人ではむりです。
カーター 誰かつれてくとしても、君ではだめだ。
マサオ Why?
カーター 爆破作業の経験が?
マサオ 何度もあります、地震の実験で。
カーター (笑って)爆破ができても足手まといになるだけだ。
マサオ No.
カーター 悪いけど、そんなやせっぽちではむりだ。I'm sorry.
マサオ (追いかけて後ろから殴る)No!(しがみつく)
カーター (背負い投げ、絞める)行けないよ。帰るんだ。立ち給え。(引き起こす)
マサオ (殴る)
カーター (血を吐く)邪魔をするな。帰りたまえ。
マサオ No.
カーター (足掛けてひっくり返す)
マサオ (追いすがって足を取る)
カーター (腕ひしぎ、投げ飛ばす)
マサオ (追いすがり腿に咬みつく)
カーター Ah! こいつ、何をする?(ぶん殴る)
マサオ (倒れる)
カーター ひどい奴だ、咬みやがった。
マサオ (ヨロリと追いすがり、しがみつき、殴ろうと)
カーター (遮る。あきれてもう一発)
マサオ (倒れる。起きられない)
カーター Life is woderful…ha…hey Masao. How do you say "life is wonderful" in Japanese?
マサオ (気絶)
カーター (背負って去る)
―――
さや そして、6年が経った。リオ・ガレゴス港、アルゼンチン南端、近未来。海鳴り――。
オリヴィア 網はあったの?
アンリ ああ、なにせ鼠がいないんでね、倉庫の奥で意外に無事だった。それより困ったのは帆だよ。――帆船の時代じゃなかったからな。
オリヴィア エンジンは大事にとっとくのね。
アンリ 南極の油田からいちいち運ぶのもたいがい難儀だろう? 夏までは、毎日のタンパク質はかったくりで揚げるしかない。いやあ、アルゼンチン隊に漁師出身者がいないと聞いた時にゃ頭を抱えたよ。
オリヴィア アフリカーナー様々だわ。
アンリ ケープとフエゴじゃ魚種も共通してるんだとさ。山ほど獲ってくらァって気勢を上げてたよ。
オリヴィア アンリ。…逞しくなったわね。(腕に触れる)
アンリ 親子ほども歳は違うがな。老兵も、いつまでも博士様てわけにゃいかん。いい女であれよ、オリヴィア…。(遠く)騒がしいな。大漁旗もまだ出来上がらないに、もう帰投かな、連中。
グリー (当日参加の少年。駆け込んで)はかせ! 母ちゃん! 人が! 男の人!
アンリ ほうほぅ。なに、人だ?
グリー ぼろぼろの。杖ついて!
アンリ ――人間が生き残っていたと…?!(立つ)
グリー 日本人じゃないかって、みんなが。
オリヴィア (ふらりと立ち)――マサオ…(駆け出す)マサーオ…!!
グリー (追う)
アンリ (ひとり)――幾度…、私たちは奇跡のように生き残ってきたことだろう。ホワイトハウスの自動核攻撃システムを破壊するために最後の原潜と何人かの決死隊を送り出さなければならなかった時、ワクチンの試作品はぎりぎり間に合わせたものの、私たちは早くも原罪を負ったことを思わずにはいられなかった。もう、ひとりの戦死者も出すまいと我々は誓ったばかりではなかったのか。全滅をまぬかれるために死者を選別するような世界は二度と作るまいと。しかも決死隊の任務は頓挫し、リチウム弾は世界中の空を飛び交った。超高速の中性子は全都市を照射し、死の都たちにとどめを刺した。マサオは爆心にはいなかったのだろう、命は取り止めたが、身体も頭脳も大きく損なわれていた。それなのに――いったい、どうやって! ワシントンからこのパタゴニア南端までの一万キロ余りを、六年かけて、徒歩で、彼はたどり着いたのだ。そんなことが可能なのか? だが事実として、彼は今、ここにいる…。
マサオ (両脇を支えられて来る。古い袈裟…)鼠なら、いたよ…。
アンリ そうかね…!
マサオ コウモリも…鳥もいる…。
オリヴィア (座らせながら)話さなくていいのよ。無理しないで。
マサオ 無理? 無理ならもう一生分したさ。君は…?
オリヴィア え…?
マサオ 分からないんだ。南に誰かが生き残ってることはなぜだか知ってた。それが誰なのか…。
アンリ いるとも。いるよ。このリオ・ガレゴスに三百人、そして南極本土に一万人。
マサオ (驚いて)そんなに…。じゃあ人類はやっていけますか。
アンリ ただ、女が二十人足らずでね。子どもはなるたけ産んでいるが、そのグリーがいちばん歳うえで、まだ六歳。
マサオ 君はグリーっていうの。ノルウェー?
グリー うん。
マサオ 「夜明け」か。いい名前だ。とてもいい…。
オリヴィア なにか食べる?
マサオ ありがとう。(見送り)親切な人だ…。
グリー 父ちゃんだよって言ってた。
マサオ 俺が…? ふふ…。
アンリ マサオ。私たちはみな、君を知っている。
マサオ そうですか。どうもボケて、申し訳ないです…。
アンリ そこで訊きたいことがある。私たちの調査で分かったことは僅かで、病原体はもはや存在しない、中性子線の照射で幸いにも滅んでくれたということだけなんだ。ねえ、君から見て、世界はどうだね。(間――)
マサオ ――世界は…、安泰ですね。
アンリ ほう?
マサオ 人はいません。犬も、リャマも、コンドルもペンギンもいません。でも世界は大丈夫です。
アンリ ふむ。
マサオ 僕の髪はしらみだらけです。しらみが動物につかなきゃ生きていけないのなら、こいつらはなぜ滅びてないんです。
アンリ ふむ。
マサオ 畑だったところには藷やトウモロコシが自生してます。魚は棍棒で獲れます。生き残りの命はみんな、なんとかうまくやってますよ。
アンリ ううむ…。
オリヴィア (焼き魚の皿(プレート)を運んで)召し上がれ。どうぞ。
マサオ あ…。(箸を掲げまじまじと見て)ああー、箸だ…。あまり久しぶりで…。いただきます。
オリヴィア あなたの箸よ…。
マサオ (聞いていない)
グリー (手持ちぶさたで、歌う)
見たものしか信じないといったんだ
甦った神の子にしっかと手を触れて
ああ やっぱりいらっしゃるといったんだ
マサオ …いつか、聞いたな…。
グリー インドの歌…。
マサオ ふうん…。――これは…(魚を持ちあげ)ヨロリですか。
グリー ヨロリ?
アンリ アフリカーンスでスヌーク(Snoek)というそうだ。バラクータかな。
マサオ 似てる…。網でこすれて肌が破れて、この袈裟みたいによれよれだ。――うん。そろそろ潮目かな。
オリヴィア え…?(かすかな不安…)
マサオ 皆さん。ご親切にありがとう。その…安心というもんがつくづく久しぶりでありまして、こうして馳走を賜りますと、にわかに目さえ霞みます。
オリヴィア どうしたの…。
マサオ 皆さんこれから北を目指すのでしょう?
アンリ ここを基地にして、できるだけ早く安住の地をとは思っている。
マサオ 生き残りがいるとしたら、アマゾネス…。
アンリ そう。
マサオ 赤道は疫病だらけですよ。
アンリ わしは医者でな。
マサオ カムチャツカ、シベリア、もしかしたらヒマラヤの奥地にも…。
アンリ せいぜい数百人ずつだろうがね。
マサオ まさにノル・ウェイか…。すべてを訪ねるつもりですか。
アンリ 何十年もかかると思う。君らモンゴロイドの来た道を逆戻りさ。だが、人類には、その――、
マサオ 希望が必要、ですね。さすが南極越冬隊だ…。
オリヴィア 思い出したの…?
マサオ その冒険に、私は邪魔になりましょう。
アンリ (不安に)なにを考えているのかね。このうえ君に働かせようとなどとは誰も思わないよ。君は、英雄だ。この世界が生きるに値するところであることを、君は証明してくれた。ゆっくり休んでくれ。ここでもいい、北に同行しても構わない。
マサオ できれば、小舟で海に出たい。(ぼそり 。間――)
オリヴィア (こらえて)なぜそんな――。
マサオ 私は――、クマノというところに育ったのでした。即身成仏という考えがありまして、フダラク…、いや、ええと…、そこでは、人は老いると小舟で沖に漕ぎ出しまして…、
オリヴィア やめて。
マサオ (河原に向かって歩き出しながら)体は帰らないのですが、ちょうどこういう、ヨロリというぼろぼろの魚になって、ひょっこり釣れたりするのです。ね、あなたがた。人は、奇跡のように生き残りました。象もライオンも、鷲も雷鳥も滅びたのに。でも、もっと大きな奇跡がありましょう。僕、思うんですが、世界は滅びません。まるでチェーホフのカモメです。私がここで木乃伊になっても、ならなくても、世界は続いていく。夜明けは、死の世界に訪れるわけじゃない、世界はまだまだ生きている。お分かりになりますか、そういう、いとおしさの在り方が――。
アンリ 我々は、君を守るよ。
グリー (マサオの手を取って頷く)
マサオ ありがとう。この地に、溶けるように、静かに生きて、死んでいこうと思います…。愛してる…。Life is wonderful…。
オリヴィア マサーオ…。(泣く)
さや 海鳴り――。

そのマサオにもう一人の袈裟乞食が合流する。

祥子 あんたはどこかな? はぁザクセンか、ザクセンかな、そうかなァ、ニーダーザクセン人はこのあたりへはえっときておった。ザクセン人は昔からよう稼いだもんじゃ。このあたりへは木挽や大工で働きに来ておった。大工は腕利きで、みなええ仕事をしておった。
(ここはルーマニアの山中、バリネシュティ村。この老人の住居はまったくの乞食小屋である。天井もむしろで張ってある。天井の上は橋。つまり橋の下に小屋掛しているのである)
あんたもよっぱど酔狂者じゃ。八十にもなってのう、八十じじいの話をききたいといってやって来る人にあうとは思わだった。わしは八十年何もしておらん。人をだますことと、おなごをかまう事ですぎてしもうた。
河原の石ころのことくらいはなせるだろうといいなさるか? 石ころか…。もうたいがい見飽きたがのう。
そう。ある時の、日本のある美術家のセンセイからこのスチャヴァの田舎くんだりまで、書留で「石」が送られてきた。そうさなこぶしほどの石を、細い針金でくくって荷札をつけて。別段特殊な石には見えなんだ、そこのシレト川の河原にもいくらもありそうなごろた石じゃった。が、わざわざ送ってくれたもんじゃ、わしゃ否応なしにそいつをまざまざ見渡したり、送り主の意図をいろいろ思いめぐらすことになった。じゃが結局のところそいつはどこまでもただの石ころで、ただ送り主の観念の凝固物としてだけ、ほかの石から切り分けられておったことに気づいたのよ。ほうしての――、これはどうも、よくないことじゃあないかと思ったことでな。
話に聞けばタカマツジロウという美術家は、日本の多摩川の、川辺に無数にころがっている石の世界に入りこみ、石ころに定められた数字をペンキで書き標していたそうじゃ。そうやって番号を振られると、石は石ほんらいの姿や表情を抑えられて、なんや整頓された「数字」の顔になる。考えてみんさい。河原には無数の石、そして無数の人もおるじゃろ。そのお人らはどれも、あんたも、あんたも、生活を負った具体的なお人じゃ。人に番号は振り切れんよ。国民番号? あっは! わしはとうに登録からこぼたれ落ちた爺いじゃて、そうさの配給所の待ち合い札のほかに番号なんぞとは縁がないがの。じゃがそれが人の本来ぞね。こうして午後の河原に立てば、誰が誰やら、たそがれかはたれ、人の数だけ小っさな歴史があろうじゃないかえ。たかが小石といいなさるな。たかが小石に番号を振れば、やがてその社会は、たかが庶民に番号を振るのじゃ。おう、そうじゃ。どうですい、足元の石を拾ってごらんなされ。どうぞ皆さん。なあ、冷たいかえ、あったかいかえ。ちょっとこうほこりを払ってな、どう、ほっぺたに当ててごらんせえ。どうじゃ、あんたは謂わば今、その石じゃ。その石をまじまじ見て、もしじゃよ、そこに番号が振られていたらどうですい。どうもイヤァな気がしましょうがな。あんた方がこのあとそれぞれの家に帰る幸せ、それはあんた方のだいじなもんじゃ。ならば河原の石も河原に帰るのが幸せじゃろうて。うん? そうか、時の流れ、時の流れに身を投じるなら、あんた、その石、このシレトに投げ込んでみましょうかいの。よろしいかな? 構えて。わしも投げる。わしゃあ河原の河原もんじゃあ! よいか、いっせのせで投げますぞ。いっせの、せ!
(川に入っていき)こうやっての、もしかしたら今わしらは、わしらと石とが入れ替わって、この川をくだる歴史にも、身を置いたのかも知れん。うん。夢じゃ! じんせい八十年、うかうか生きて何もかもなくしたが、わしらなぞ時の浅瀬に寄りついた流れ木くらいのもの、のう、あんた、わしゃあちょっと彼岸にいってみたくなった。橋の下のむしろがけ、そんな暮らしも悪くはないが、ふだらくじょうど、よろぉりぃ、よろりぃとぉ、こぉぎぃいいだぁしぃ、きかみたけびぃてえ、あしずりのぉ、ちりりぃちりりぃとおちゆぅけぇばぁ、あしとぉ、こいしぃのぉ、むこうぎぃしぃ。ちぬもぉ、うないもぉ、ともづれのぉ、ゆくえぇしられぇぬぅ、さんどぉがぁさぁ、とくらあ。(ザブザブと遠ざかる)
さや 祥子さぁーーーん!
祥子 ああ?(遠い)
司馬懿 魏王(との)! なぜあなたは、玉座につこうとなさらぬのですか?
曹操 万民から愛おしまれる存在に祭り上げられながら、社稷を祭る祭祀をすっぽかしては四海をうろつき、野に草をかじり、市にて猪を捌く。名もなき人に交じっては酒を酌み、箸で皿を打ち音曲を奏で、気の赴くままいたる所に現れては、ただ心情のままに言葉を放つ。そんな天子を戴いてみろ。天下万民は不安のどん底だ。それとも司馬懿。
司馬懿 (ごくッ…)
曹操 俺が人間であることを、誰かがやめさせると言うのか?! ハハハハハ!(去る)
もえ かっこいい…。
さや 水没が?
もえ 水没も含めて、もうなんというか語彙力。迎えに行ってきます。
さや いいよ!
夏水 てかダメだよ。
もえ ダメ?
夏水 出番ってもんがね。倍も歳違うとね、しょってきたもんがあるからね、同じタイミングじゃ活躍できないよ。
もえ そうかあ。
夏水 かっこよくは、やがてなる。今は、
もえ うるせえ黙ってかわいいって言え。
皆 おお。
夏水 そうそう。
もえ 分かりました。かわいい方やります。
さや なにやるの?
もえ あの、(ひそひそ)
さや まじか。分かった。
もえ 着替えましたし。はいこれ(呼び子)
さや なに。
もえ ベルサーチのとこで吹いてください。
さや お、おう。じゃあ18'00"からね。
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