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2020年02月03日05:57

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本を返す前に

 図書館で乗代雄介の『本物の読書家』を借りた。

 二週間前のことだ。

 返却は昨日だったし、誤解のないようにことわっておくと、もちろん返却した。

 ただ最後まで読み切ることはできなかった。

 ここしばらくはちょっと忙しかったし、他に読みたい本も多かったから。

 もともとトヨザキ氏のツイッターで、次の芥川賞はこの人のなんとかいう作品だ、っていうつぶやきがあってさ。受賞したら文藝春秋買ったときに読めるだろう、と思っていたらはずしたのだ。

 となるとかえって読みたくなるのが人情というもの。

 トヨザキ氏の中で評価の高い『本物の読書家』を、とりあえず図書館で借りることにしたのだ。

 最初の方を読みかけて、「うーん、今の気分にはのらないな」と置いているうちに、返却日が来てしまった。

 我が家では基本、毎週図書館に行くようにしている。独身時代、一時は毎日本屋さんに通い、けっこう山のように本を買っていたものだけど、家族ができ、自分の居住スペースが大きく(苦笑)制限される今、そんなぜいたくは許されない。

 それに慣れてくると、図書館も楽しい。

 子どもの本を探すのに駐車場の無料時間がいっぱいになってしまうので、自分の本はもっぱら予約だけどね。

 それでも財布を気にせず、好きなだけ本を読めるのはありがたいし、読んだ本でも気に入ったものは改めて購入することもある。『理不尽な進化』とか加藤典洋の本とか。

 で、本書。

 返却日が間近になって、ぱらりらとめくってみた。

 老人ホームに送られることになった大叔父を連れて、特急はさけてという母の希望をいれつつ付き添うことになった著者らしき主人公。

 大叔父は読書家で大量の本を持ち、それも処分しなければならないという話。ただ川端康成からの手紙を持っているという噂があり、そのあたりが気になるところ、という感じで始まる。

 途中、ちょっとうさんくさくみえる男とボックス席で同席となり、そこから文学談義、さらに広がって大叔父の若いころの話へ。噂される川端康成の手紙の真相は・・・と、だんだん引き込まれていったんだよね。

 これ、もとの文学作品を知っている人たちは、もっと興奮して読んだかもしれないなぁ。なんか、読書好きをくすぐる雰囲気があるもの。

 返す直前になって、最後まで読みたくなり、収録策のうちなんとか『本物の読書家』だけは読んだ。

 けっこう面白かったし、のこりの話も読みたいな。

 図書館に行く時間直前まで読み続け、その焦りの中で、なんとなく恩田陸の『待っている人々』を思い出した。

 『三月は深き紅の淵を』の中の最初の話。あれは、『三月は深き〜』という本を、独りにだけ、一晩だけ貸すことができるという約束事にのっとった物語だった。恩田陸作品の中では『木曜組曲』と並んで大好きな一編だ。

 読書は楽しい。

 面白いと聞くとぜひ読みたいと思うと同時に、いざ手元にあると、なかなか読みだせない。

 そして返すとかの理由で読めなくなると思うと、がぜん読みたくなる。

 そういうもどかしいような引き込まれ方も、読書の愉しみだなぁなんて思ってしまった。


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