先日、テレビをつけたら、
「もう一度会いたいです」
というコメントが聞こえてきた。
ちなみに運転中。俺がテレビつけるっていったら、そのときくらいだから。画面はなしだ。
その後、美空ひばりの歌が聞こえてきた。
美空ひばりをなつかしむ話かと思ったら、どうやらそうではない。
AIとかのコンピュータ技術を使って、現代に美空ひばりを甦らそうという話らしい。
世代的にも、俺の中に特に美空ひばりに対する特別な印象はない。そういう人がいたんだ、というくらいなものである。
技術者や音楽関係の人たちが会議しているらしい場面に続いて、美空ひばりがアナ雪の歌をうたっている声が流れる段になり、俺ははチャンネルを変えた。
ひどくイヤな気分になった。
なんというかねぇ、ほんとに気持ち悪かったのだ。
理屈をつければ、冒涜とかいうことにになるのかもしれない。
美空ひばりに思い入れはないし、アナ雪の歌を美空ひばりが歌うことがまちがいとも思わない。
生きていればね。
しかし、ずいぶん前に亡くなった美空ひばりがアナ雪を歌うことはありえない。ありえないことが、体感的にわかっていたのだろう。
それだけリアルに響いたのかもしれないけれど。
美空ひばりうんぬんじゃなく、なんか死んだ人を無理やり起こして立たせているような、そんなイヤな気分になったのだ。
昔の小説で『猿の手』ってあったけどさ。あれもイヤな気分にさせる小説だった。
最初に聞こえてきた、「もう一度会いたいです」という素朴な気持ちをすら、踏みつけるような気がした。そんなことを望んでいたのではないだろうに、と。
できても、やっちゃいけないことはあるんだろうな、なんて思った。
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