mixiユーザー(id:9051319)

2019年11月03日23:54

158 view

リブートしたけどおいてけぼり 『ヘルボーイ』

旧作から11年。リブートした本作の監督は、ギレルモ・デル・トロから、
『ゲーム・オブ・スローンズ』のニール・マーシャルへと移った。
だが、心機一転のリブートは観客を“おいてけぼり”にしてしまう。

原作コミック「ヘルボーイ:百鬼夜行」をもとにした本作は、
ヘルボーイの誕生を描き、彼が持つ「世界を滅ぼす力」を中心に進む。
彼の力をアーサー王がバラバラに引き裂き、封印した、
魔女ブラッドクイーンがねらうのだ。

R15の年齢制限ゆえ人体欠損などゴア描写は満載。
アクションシーンは今時の映画にふさわしく、実際、旧作より激しく猛々しい。
巨人の頭を巨大な武器で叩き潰すデタラメな暴力に血がたぎる。

一方、ファンタジー要素や異界の調度・文物のうつくしさは、
旧作に軍配があがる。*1 全体の美術をデル・トロがトータルデザインした旧作。
比較は残酷だ。

問題は構成と説明の悪さ。

ヘルボーイと血の魔女の出自には、
アーサー王やエクスカリバーが関る。マーリンといった伝説の人物も登場。
ヘルボーイを召喚したラスプーチンやバーバ・ヤーガと大量の原作の人物が姿を現す。
映画はこれら解説をほぼしてくれない。おいてけぼりだ。*2

今回ヘルボーイの相棒は、
霊媒のアリス・モナハンとジャガーに変身するベン・ダイミョウ。*3
2人の活躍は薄く、
また2人の人生を順を追って説明しないために観客は不安になってしまう。*4

初見の人々に「理解させる」という努力がたりない。怠慢だ。


※1 たとえばデル・トロなら「妖精らがヘルボーイたちを導き出す場面」はかならずいれそうだし、「チェスの駒を前に座る女王の場面」はかならずいれるだろう。リブートの映像は黒や白、灰色の多用で暗く重く、旧作にあった青や緑、金銀といった世界の豊穣さをあらわす多色な美術が減少しているのだ。

※2 自分はわかる。ただ、その“理解”は原作の知識あってゆえだ。

※3 ダイミョウは『HAWAII FIVE-0』でケリーをつとめていたダニエル・デイ・キムだ。ただ最近よくあるように、このキャスティングは「日本人でないアジア系俳優に、無理矢理、日本人をやらせて日本語をしゃべらせる違和感が丸出し」だ。それ自体が演技する演者に失礼だし、こういう違和感があるならば、最初からキャラクターの国籍を変更してしまったほうがよい。

※4 たとえば霊媒のアリスだ。彼女は子供時代に妖精に取り替えられた子供(チェンジリング)で、彼女を取り換えたキャラクターが、映画だと、この一件でヘルボーイと因縁ができた猪頭のグルアガッハだ。ただ、映画は過去の一件をやらず、成長したアリスを先に登場させてしまう。そのため初見の人物は「だれ?」と不安になってしまう。順序が反対になっているのだ。こういう構成の悪手が本作では多々見受けられる。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年11月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930