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2019年10月06日09:44

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もしもダイハードにブルース・ウィリスが欠席していたら・・・「ホテル・ムンバイ」



とにかく最初に言っておきたいのは、今公開されている映画の中で一番のエンターテイメント作品はコレ!だという事です。
「エッ、おっさんずラブより?」とか言われると困りますが、個人的な性癖等を考慮せず、単純に面白い映画を観たい!という欲求にはコレが間違いないと思います。
ヤフー映画の評価ランキング1位は、いつもは信用できないかもしれませんが、今回だけは正確であると言わざるを得ません。

この映画は、2008年にインドのムンバイで実際に起きたテロ事件を元にしています。
ミニシアターとかで公開されているので、アート臭かったり難しかったり退屈だったりするのでは?と心配なさる方もいるでしょうが、この映画は俳優が地味なだけで、内容はド派手なエンターテイメントである事を何度でも強調したいと思います。
リアリティを重視したドキュメンタリータッチな作品ではなく、あくまでも娯楽作として作られているのです。

序盤からテキパキとテロ行為を実行していくテロリスト達のおかげで、割合スムーズに、観客を阿鼻叫喚の地獄へと誘ってくれます。
「死ぬのかい、死なないのかい、どっちなんだい!」と、なかやまきんに君なら上腕二頭筋に話しかけたくなるシーンの連続で、様々な宿泊客やホテルの従業員達の視点で、危機一髪のシチュエーションを何度も体感できます。
これは「死霊館」シリーズのような、恐怖シーンのアイデアを次々に見せる感覚に近いと思いました。

ホテルがテロリストに占拠されるという設定で思い出すのは、アクション映画の名作「ダイハード」ですが、この映画には残念ながらブルース・ウィリスは登場しません。
電車の計画運休に巻き込まれたのか、親戚に不幸があったのか、ご当地アイドルのイベントに遠征したのか理由は分かりませんが、ダイハードの現場に彼が来られなかったらどうなったか。
この映画はまさにそんな悪夢を描いているのです。

観ていると本当に、筋肉アクションスターがどうして誰も登場しないのか、非常にヤキモキします。
シュワちゃんは?ドウェイン・ジョンソンは?チャック・ノリスは?
問答無用のテロリストによって、何の罪も無い一般人がバリバリ殺されているのに、銃弾を1発も浴びずに何百人も殺せる(しかも90分以内に)彼らは、一体どうしたのか。

ヒーローが存在しない現場は、無情に死体が積み上がる地獄でしかありませんでした。
その中で、どうにかして生き延びようとする人、また誰かを救おうとする人々を描いていくのがこの映画です。
当然あらゆる手を尽くすわけですが、テロリストの方も筋肉アクション映画の悪役と違って愛らしい馬鹿ではありません。
テロリスト自体はただの少年達なのですが、彼らに指令を出す男(声だけの出演)が実に冷静かつ狡猾なため、嫌らしい方法で籠城している宿泊客を誘き出すのです。

この映画では、このテロリストの側も割としっかり描かれているのが印象的です。
まだ少年の彼らは、誰彼かまわず、一切の躊躇もせずに皆殺しにする戦慄すべき存在です。
しかし、彼らにとっては部活動の公式試合みたいなもので、真面目に練習を積んできた事を遂に実践する場に過ぎないのでしょう。
自分がするべき事をしているだけ。
彼らは人を殺す以外では、ホテルの料理をつまみ食いしたり、残された家族がきちんとお金をもらえるか心配するような、純朴な少年に過ぎない様に見えます。

もちろん、彼らの心の中まで分かりません。
間違った行為と薄々感じても、絶対に逆らえない状況なのです。
ただ教えられた事を、間違った事だとしても盲信できれば、まだ幸せなのかもしれませんが。
アクション映画なら、ヒーローが彼らを救い更生させ、悪の親玉を倒して終わるのでしょう。
しかし・・・。
そして首謀者にとっては、このテロの必要経費である少年達のコストは、限りなく低いのです。

このあまりに無残な話に、一体何が悪者だったのか、答えを出したくてたまらなくなると思います。
そいつが蜂の巣になって、ビルの屋上から転落しなければ、スッキリしないからです。
イスラム教が悪いのでしょうか?
日本人からするとまるで知らない宗教のため、まるで悪魔の邪教の様に感じてしまいますが、実際は基本的の他の宗教と変わらない、当たり前の倫理を尊ぶものに過ぎないのです。

宗教は様々な戦争やテロ行為に利用されていますが、これは民衆の心を掴むのに容易だからに過ぎません。
実際は常に政治的なものなのです。
基本的に誰もが正しいと思う事、理想的な事を教える宗教の教えに、ちょっと混ぜてやれば良いのです。
そうすると、いつも正しい事を言っているのだから、これも正しいと思ってしまう。
これが間違いのもとです。

「誰」を信じるのではなく、「何」を信じるのかが大切なのではないかと思います。
人殺しが悪いのならば、誰がどんな名目で命じたとしてもそれは悪い事なのです。
逆に、人を殺した者の言葉にも、意味深い、価値のあるものが存在する事もあります。
発言者とその中身は、常に切り分ける必要があるのです。
そこを切り離すのは実際、なかなか困難なのですが・・・。

といった事を、後になってグルグル考えたりもしましたが、観ている間はそんな暇ありませんでした!
最後まで手に汗握る緊迫感の嵐。
そして、最後に実際の映像が出た時の感動。
まさしく問答無用の、パニック・エンターテイメントでした。

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