クリストファー・R・ブラウニング著
ユダヤ人や非ドイツ人虐殺に関わった警察官部隊。
必ずしもナチス党員や親衛隊ではない「普通の人々」がなぜ身の毛もよだつ大量殺人に手を染めたのか。
この本を読むまで、国防軍や親衛隊の部隊以外に警察官が軍隊の補完としてドイツ国外でユダヤ人虐殺に関わっていたことをまず知らなかった。
殺したのはユダヤ人だけでは無くポーランド人やロシア人やジプシーなどナチスが「劣等」とみなしたあらゆる人種に及ぶのだが、老若男女問わず殺戮した。
同じドイツ人であっても身体障碍者や精神障碍者も根絶やしにしようとした。
ハリウッド映画で執拗なまでにナチスを叩く理由がやっと判った気もする。
正規軍ではない彼ら警察官の中には命令とは言え逡巡する者や嫌悪を覚えるものもいて、それらの人の一部は殺害から逃れられているのは日本軍の初年兵教育での銃剣刺突とは違うのだが、処刑に加わった者も、あまりの凄惨さに精神を病む者が正規兵の中にすら現れたため、罪悪感を減らし、同時に殺戮の効率化のため強制収容所でのガス室での殺戮がメインになって行くという悪魔の計画…
本書の後半は別のホロコースト研究者との論戦をベースにどうして「普通の人々」が殺人者になったのかを解き明かそうとする。その要因は多岐に及んでおり、少なくとも「ナチス政権下の反ユダヤ感情の浸透」だけではなかったと筆者は主張する。
そしてある状況下では誰でも殺戮者になり得るという問題を投げかけている。
ヘイトと社会の雰囲気、おかしなことはどこかで止めないとまたホロコーストは起こるのかもしれない。
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