mixiユーザー(id:1219102)

2019年06月08日16:43

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シューベルトの難解さ

シューベルトの作品が苦手だ。
メロディラインの美しさはモーツァルトさえ、舌を巻く天才性を示すのに対し、作品の構成力といか文章でいう起承転結がない。
そのもっとも顕著なのがピアノ・ソナタ。
特にD850は村上春樹氏が、音楽エッセイで取り上げていた。

そこにも記載されていたが、気ままに思いの向くまま書いたのだろうということ。
なるほど、素晴らしいメロディはひたすら、形をほとんど変えず、繰り返し、それもしつこいくらいに登場する。
バッハやベートーヴェンであれば、間違いなく変奏とかメロディの形や構成を変えるだろうに。頭が悪いのではないか?とさえ、思ってしまった。

弦楽四重奏になると15番の妙に明るく振舞ったと思った直後、まるで死後の世界でも見て来たかのような陰鬱で難解なメロディを奏でる。
この曲に関しては躁鬱と見ることも出来るかもしれない。
何種類も聴いた中で、メロスSQ(ハルモニア・ムンディ)盤が一番しっくり来る解答をしてくれるが、それでも頻繁に聴ける曲ではない。
少なくとも私には…

ただ、たった31歳であれだけの歌曲を残し夭逝した天才。
モーツァルトのような浪費癖はなく、〇んこ、△んこといった小学生以下の子供が喜んで話すような幼稚さもない人が、この躁鬱、構成力の無さはどうにも解せない。
これが私の一番の謎だった。

そして、色々検索していて、なるほど…と少し理解出来た気がする記事を見つけた。
https://schubertiade.jp/lecture2/death.htm

国際フランツ・シューベルト研究所機関紙“Brille”96年1月号に掲載された記事というのだから、かなり信頼性は高い気がする。

長いので要約すると、1818年エステルハージ家の女中からうつされた梅毒の治療に用いられた水銀薬の過剰摂取により、脳がダメージを受けていた可能性があるというもの。
10年後の1828年にはそれが元で亡くなってしまう。
亡くなる少し前に友人に宛てた手紙では薬の副作用によると思われる中毒症状で11日食事もまともに取れない状態の中、ふらふらの状態でベッドとソファーを往復していたという。
歌曲「魔王」のモデルとも言われる厳格な教育者で音楽家としての息子の生き方を認めなかったと言われる父は、それでも高価な水銀薬をせっせと買い与えていたらしい。
それが現代の毒薬であるとも知らずに…

この記事を読んで思った。
梅毒の進行と水銀中毒が悪化して脳に影響を与えた。
メロディライン等は楽譜に残せたが、全体の構成まで思考を巡らせるのは脳の状態、そして体力的に無理だったのだろうと…
特に傑作とされる最晩年のピアノ・ソナタ、弦楽四重奏等は生前全く日の目も見ず、死の床のある部屋から出られない(ほぼ隔離状態)状態で書かれたことを考えたら、とんでもないことだ。
朦朧としていたであろう思考能力であれだけの作品を書き上げたのだから…

この視点では未だピアノ・ソナタ、弦楽四重奏は聴いていない。
じっくり取り組んで聴く必要があるかもしれない。
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