mixiユーザー(id:1219102)

2019年06月02日21:40

194 view

ノクチュルヌ【2】

今夜はこの曲の私が考える決定盤二つを書こう。
もし、今の感性であれば、ジャン=ポール・セヴィラも候補かもしれないが、
これから書く二つは、この数年〜10年以上別格評価であった。

3.ジェルメール・ティッサン=ヴァランタン(新録音)
先に書いた旧録音とレコーディング・エンジニアは同じアンドレ・シャルラン。
あの時はモノラルだったが、今回はステレオ録音。
時代も70年代となった。
ステレオとはいえ、このシャルラン氏は大手レコード会社のようなマルチ録音ではなく、マイク1本さらしに巻いて…の1ポイント録音の名手として名高い。
悪く言えばモノラルと余り変わらないじゃん!とも思うが、やっぱ再現される空間は広い。
今回は20年余り後、ティッサン=ヴァランタン女史はそれなりに高齢となったが、流石愛弟子…素晴らしい解釈となっており、演奏水準は圧倒的に高い。
CD1枚では収録できず2枚組…つまり曲によってはゆったりしている。

本当かは定かではないが、フォーレ自ら弾いた演奏(蠟管録音?)を聴いたことがある。極めて淡泊で余り思いを込めた演奏はしていなかった。考えたら、フォーレの弟子のラヴェルも弟子のペルルミュテールに対して極めて淡泊に弾くよう指示していたという説もあるから、当時の考え方であったのかもしれない。

しかし、ティッサン=ヴァランタン女史は、師匠の教えから一歩も二歩も先を考えたのではないか?と思えるような曲によって解釈を大きく変え、思い入れを込めているように思える。
単に殿堂として奉るのではなく、優れた解釈として是非一度は聴いて欲しい名演だと思う。

残念なのは、シャルラン氏が税金滞納をしたらしく、当時の芸術を解さない愚、税官吏にマスタテープを没収されテープは廃棄されてしまったという話を聞いたことがある。
真偽はともかく、マスタテープがないのは本当らしい。
日本ではレコードはトリオ、CDは日本クラウンで発売された以降、フランスではマイナーレーベルでほんの一時だけリマスター盤が売られたことがある。
非常に繊細なリマスタリングが施されていたが、妙に帯域バランスが高域に寄っている。
ハイレゾに変換してヘッドホンで聴くと音が左右に動き回るらしい。

日本クラウン盤は全体的に高域方向が弱く、低域のバランスが強めだった。
恐らくだが、マスタテープがないので状態の良いレコードからデジタルマスタをおこし直し、少しでも今に近い帯域バランスにしようとリマスタリング・エンジニアは苦心したのだろう。
原盤が1ポイント録音ゆえか、帯域をいじるとステレオ再生時、位相がずれたのではないか?
幸いにも日本クラウン盤も怪しいフランスのマイナーレーベルも所有しているので、じっくり聴き比べることも可能だ。

4.デヴィッド・ジャルヴェール
やっと出た!カナダの若手ピアニスト。ハッキリ言って無名だ。
勿体ない。偶然、試聴して即買いした。
解釈でティッサン=ヴァランタンの先を行く、目下の私のベスト演奏。
録音は30歳前後、良くぞその年齢でこれだけの解釈をしたもんだ…と感心した。
多少、???と思う個所はいくつかあるものの、総合的にこの水準で演奏しきったのは奇跡かもしれない。
残念ながら、舟歌も他のフォーレのピアノ曲を録音していない。
この曲だけ、恐ろしいほどの思い入れがあったのかもしれない。
そうだったとしても、この曲でこれが聴けることは幸せだ。

続く

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年06月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      

最近の日記