憧れの人(0169 ドリーン・エバンス)

ボクは昔からオバサン好きで「好きな芸能人は？｣と聞かれると、十代の後半からずっと「五月みどり｣というのが答でした。今もモチロン。彼女の年齢は…言いませんが、喜寿は越えていらっしゃいます。
でも今回採り上げる憧れの人は五月みどりさんより二回りも上！既に鬼籍に入ってらっしゃいます。そんな憧れの君とはDoreen Evans(ドリーン・エバンス)女史です。

彼女は1916年にエバンス家の3人目の子供(長女)として生を受けました。ロンドンの素封家だったエバンス家は、いくつかの会社に加えてベレビュー・ガレージというMGのディーラーも経営していて、ドリーンの父母もレースに興じていました(とてつもなく金のかかるレースは大金持ちの道楽でした)。

ドリーンは、17歳になって運転免許を取得すると、両親や2人の兄(ケネスとデニス)と共にレースに参戦するようになりました。サーキットでは「あの若い美人は誰だ？｣と話題になったそうです(ブルックランズ・サーキットを走る最も若い女性でした)。

初めはJ2やL2といったMGの市販スポーツカーに乗っていましたが、運転技術が向上するとQタイプやRタイプなどの純レーシングカーを使うようになりました。

写真はQタイプです。わずか8台しか作られなかったこの直列4気筒OHV746ccのレーシングカー(120馬力！)は通常2座ですが、ドリーンが駆るのは細身の単座でとてもカッコいいです。現在は知人のTom Dark(トム・ダーク)が所有するこの特別なQタイプは2007年のブルックランズ・サーキット100周年に出場していました。2007年6月29日の弊日記( https://mixi.jp/view_diary.pl?id=481249299&owner_id=9783394 )参照。乗っているのはトム・ダークのお母様です。

その他、1935年のル・マン24時間耐久レースに出走、Barbara Skinner (バーバラ・スキナー)と組んで25位で完走したことは有名です(本稿0159参照)。これはGeorge Eyston(ジョージ・イーストン)が6名の女性ドライバーからなる″Dancing Daughters″というニックネームのチームを組織し、3台のMG PAをエントリーしたうちの1台です。
その年のル・マンは完走26台だったのですが、Dancing Daughtersは24、25、26位で3台とも完走しました。どのメディアも女性だけのチームの快挙をこぞって報道しましたから、成績よりもパブリシティ効果を狙ったMGとジョージ・イーストンの目論見は見事に当たったと言えます。

ドリーンは、アストン・マーティンでレースを一緒に行っていたAlan Phipps (アラン・ヒィップス)と結婚してアメリカに移住します。結婚後はレース活動を一切止めましたが、飛行機の操縦をしたりしてオテンバぶりは相変わらずだったようです。
そして1982年にカリフォルニアで亡くなりました。享年66歳。