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2019年04月07日00:28

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日本人なら音よりも字幕に集中せよ!「THE GUILTY/ギルティ」



普段日本のミステリー小説を多く読んでいるためか、ミステリーやサスペンス映画については一般の方と違う感想を持つ事が多いです。
評価されている作品をつまらなく感じる事もあるし、逆にあまり褒められていない作品に感心する事もあります。
その理由は以下に書きますが、そのために今回の感想もあまり参考にならない場合がありますので、まずはご了承ください。

最近、白井智之さんの「少女を殺す100の方法」と「お前の彼女は二階で茹で死に」を読みました。
どちらも短編集ですが、短い話の中にアイデアとトリック(と悪趣味)がギッチギチに詰め込まれていました。
はっきり言って完全にやり過ぎで、こちらの理解(及び精神)が追い付かない部分もあるのですが、彼なりに本格ミステリーへの仁義を貫いた結果の様でもあり、とても感心しました。

ミステリーを読みなれている人だと、ちょっとやそっとの仕掛けには動じない上、これは知ってるよ、となってしまったりするですが、ミステリ作家はその先を読んで更にひっくり返したり、他の仕掛けを組み合わせる等してどうにかサプライズを作り上げます。
あるいは、既存のアイデアであっても話のテーマ性にうまく取り込む事で、別の感動を生む事も出来ます。
面倒なマニアを唸らせる力作は今でも数多く書かれていますし、いくら読んでもまた読みたくなる新作が次々と出版されているのです。

映画でもミステリーというのは人気のジャンルです。
ただ、小説に比べるとどうしても難しいのは、映像を見せなければならないという事です。
小説と同じ事をやっても、同様の効果を得る事が困難な場合が多いのです。
そのため、あんなに面白かった小説が随分つまらなくなってしまった、という感想になってしまいがちです。
また、聞き込みや状況の説明といったミステリーに不可欠な部分も、映像だと延々と会話を聞くだけで、非常に退屈に感じます。

ようやく今回の「ギルティ」ですが、なかなか楽しめた作品ではあるものの、正直物足りなく感じました。
電話でのやり取りのみで物語が展開し、画面に登場する主要人物は主人公のみと、非常に思い切った手法を取っています。
これで映画として成立するか、という挑戦だと思います。

この映画、もし字幕でなく直接会話を聴くという体験であるのなら、もう少しスリリングであったかもしれません。
でも、言語が理解できない日本人では結局、字幕を延々と読むという作業を続けるだけになってしまいました。
しかも、ポスター等では「音」が重要と書かれていたため、会話以外の音に事件を解決するヒントが?みたいなのを期待した人(自分も含む)もいたと思いますが、全然そういう内容ではありません。
あくまで意味があるのは会話の内容のみですので、別に字幕を読むだけで問題ないのです(臨場感は当然増しますが)。

話がつまらないわけでは無いのに、オヤジのアップを見ながら延々と字幕を読む作業は、異様に眠くなります。
実際、眠たくなったら食べるために持っていった「ぷっちょソーダ味」は、完食してしまいました。
横では友人が豪快に寝息を立てています。
劇場の観客(大盛況で、臨時で会場を追加していたほど)が息を飲んで音に集中している中、とんでもない応援上映になってしまいました。

電話の会話のみで展開する映画だと、「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」というがあって、こちらの方が地味な話ながら、想像力を書きたてられるスリリングかつ感情を揺さぶられる内容で、非常に面白かったです。
去年では、ネットの画面上のみで展開する「search サーチ」が、限定された状況の中可能な限りのアイデアを盛り込んでいて、見事なエンターテイメントとなっていました。

この「ギルティ」も、低予算ならではの思い切った設定は悪くなかったと思いますし、ある程度までの目的は十分果たされたと思います。
ただ、これならもっと話を煮詰めて、アイデアを盛り込んで欲しかったです。
映像に出さなくていいなら、いくらでも派手な話にしてしまう事が可能なのに。
ハッとさせる瞬間はいくつか用意されていましたが、それを惜しみなく連鎖させてショッキングなクライマックスを盛り上げてくれると良かったと思います。
あと、せっかく映画なので、1発でもいいから映像でガンと来る瞬間があって欲しかったです。

低予算で制限だらけの制作だったと思いますが、だからこそ「やり過ぎ」な部分があって欲しかった!
こういう実験的な映画にも興味を持って、結構たくさんの人が観に来てくれるのですから、このくらいでいいだろうと思わずに、忘れられない何かをお持ち帰りさせてやるぜ!という意気込みで、勇気を持ってどんどん挑戦していって欲しいと思いますね。

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