※レビューが文字制限にひっかかったのでここに載せておきます
2016年オックスフォード大学出版局は2016年のワードに「ポストトゥルース」を選んだ。
「ポストトゥルース」というのは「真実がどうでもよくなった」とか
「正しいかはともかくとして自分に心地の良い情報のみを受け取るようになった」ようなもんで
「トランプ大領」だったり「イギリスのEU離脱」だったりをさすらしい
著者が元新聞記者なので新聞の話が多いけど
個人的に面白かったのは3つ
�，海遼椶�P119
「朝日新聞が左翼的な記事を載せているのは、記者がそうした思想的立場から世の中を「洗脳」しているからではありません。実は営業的な制約からなのです。」
これが一番面白かった
文脈をぶったぎって載せているのでわかりずらいかもしれないが、『朝日新聞が左寄りの報道をしているのは「そのほうが売れるから」』というもの、最近は本もぶっちゃけって、すごい。
だから、プロレスの「ベビーフェイス」と「ヒール」で闘争をつづけるプロレス界のように
新聞も売り上げのために、右（保守）・左（革新）・中道というアングル（路線）で争っている、という。
同じように「海外のフェイクニュースを流していた人たちも、政治を左右したいという思想的な背景はなく、純粋にビジネスとして関わっていた」（p43）
ということで
・過激で面白おかしい情報番組とかニュースを親しみやすくとかわかりやすくといった今までも、またこれからもそういったテレビ番組はスポンサー収入のための視聴率稼ぎの道具
・ネットのニュースもクリックや閲覧数などの数字稼ぎのための道具（ネットの場合マルチ商法や新興宗教じみたものやパーソナリティ障害のような人もいてカオス）
という既存のメディアとネットもまた「金儲け」という資本主義の論理が蠢く、そもそも真実に近づこうとしない実体が描かれる。
ネットももう黎明期と違って金儲けばっかりだ。
ちょっと前までは真実に近づくまでの時間や人件費を投じて調べる余裕もあったのだけどそうもいかなくなったこともあるけど。
一応書いておくと解決法としては既存のメディアとネットも信じないで、
『自動車のディーラーの話を聞くように話半分にしておきなさい』（「禁煙セラピー」）
ということになる。
個人的には時間やお金を度外視して一つの真相にたどり着くのは一生を捧げる覚悟が必要で大変なので
適当に情報を処理して「古典」でも読みことだろうか
まあ既存ネットやネットに「すごい人」現れないし
古典というのはその「すごい人」と会える簡単な方法でさらに安価あるから
��P211
「多様な意見に触れることによる精神的疲労」
新聞がその立場を明確にしているのもそのためらしいのだが
「伝統と理性」「自由と統制」「弱肉強食」などなど
人はいろんな意見を受け取ると自分の振れ幅が大きくなって精神的疲労を起こすものらしいのだな
これは人間の機能の限界でいろんな意見で精神的疲労に疲れてくると人は一方の意見だけを聞きたくなるものらしいんだな
「ポストトゥルース」というのはこのことを指すのかもしれない
プロレスでいうと「全日」と「親日」の２つだけだった団体が増えたり、キックボクシングや総合格闘技、MMAなどに広がって
プロレスファンは応援するものが色々広がって、逆にプロレスから離れてしまったような。
��P259
「かつてテレビ・新聞はアウトローだった」
阿佐田哲也の「麻雀放浪記」の４あたりをみるとわかるけど
日本は戦後混乱期のあと、朝鮮戦争あたりから秩序が戻ってきて組織が出来上がる。
（今日本の組織が硬直化してるといわれるがその組織は戦後にできたものなわけだけど）
新聞や純文学や少し遅れてくるテレビもその黎明期は
学歴も思想もごちゃごちゃのアナーキーな人たちで構成されて
今のネットのようなカオスな状態だったわけだ
それが洗練化、高度化されて「優等生」のようになってしまって民衆の支持を失った
（だから新聞は紙媒体としては知識人御用達の情報メディアとして生き残るのかもしれない）
テレビも年数を経ていくうちに「視聴率競争」のような数字が正しいという訳の分からない袋小路に陥ったわけだ
この本があまりにいろんな情報があってまとめきれなかった
終局的に今のところ新聞もネットで有料コンテンツの道を選び始めて、ネットで無料でニュースを得るのはだんだん難しくなってくるわけで
そのときに今までの新聞のような位置にたつのはなになのか今はまだわかっていない状態、であると
最後にp55に載っていた正論（第四章で詳しく語られている）で終わりにする
この本によると議論というのは今のように相手を打ち負かすとか勝ち負けがあったなんでも勝てばいいというのではないわけで
（そういうものなら今では差別語だけど「人格破綻者」が議論に勝つわけだけど）
（こういうネットやメディアの派手なことは不満を持つ人の「ガス抜き」だったりするわけだけど）
（ネットやテレビなどの場合は体制の不満に対する「ガス抜き」の役目もある。ある種のパフォーマンスと思えばいい）
議論というのは自分がなんらかの妥協点や相手を説得するものだと
（こういうことができている欧米に日本が負け続けるのも当たり前だけど）
こういう訳の分からない口喧嘩がつづけば民主主義は迷走する。（P232）
「民主主義のダイナニズムは「数の論理」ではなく、「幅広い議論によって、自由に意見を変えらえる」こと
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