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2018年12月28日06:39

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同時代ゲーム

オススメ362。"そうだとすれば、その眼はそれらほとんど無限に近い空間×時間のユニットのなかからゲームのように任意の現実を選びとって、人類史をどのようにも組みかえることができよう・・"1979年に発刊され賛否の起きた本書は著者の一つの集大成的な魅力が難解さと娯楽さの中で両立していて興味深い。

個人的には、とは言え、本書は【主人公から妹への手紙】として各章が構成されているわけですが、唐突に(おそらく意図的に)矢継早に語られる【冒頭のあまりの読み難さ】に小林秀雄曰く"2ページで読みのをやめた"といったのと同種の不安が私にも早くも起きかけたのですが。

兎にも角にも中盤まで読み進めて、江戸末期以降から現在にかけて辺りからは急に明瞭となり"戦史(歴史)もの""スポーツ""青(性?)春ドラマ"といった様々な文学的要素が【複雑にミックスされた娯楽性】が楽しめました。

一方で、本書の軸となっている主人公たちの故郷である四国の山奥に位置する谷間の村の独自の神話と歴史【村=国家=小宇宙】からは、近代社会によって、書き換えられる前の【異質で原初的な、神話的世界】が中央(国家)と周縁(村)といった対比で【破壊(死)と再生】【アジールとしての森】【壊すものと育てるもの】といった要素で虚実織り交ぜた様々なメタファーと共に語られていて刺激的でした。

確かに前述した前半部分の難解さ、加えて語り部たる主人公の共感しにくい立ち位置、また幻想的な部分もあるが、やや生々しく頻出する性描写と、読む人を選ぶであろう部分もたくさんある様にも感じましたが、個人的には流石だな?と脱帽するかのような読後感でした。

【百年の孤独】の様な、家族を描きながら神話に挑む様なスケールの大きな意欲作好きな誰かに、また柳田國男的な民俗学好きな誰かにオススメ。
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