mixiユーザー(id:9051319)

2018年12月16日23:47

320 view

意味のありそうなことに意味などなく、あなたを意味づけてる創作が“カネ”もうけである世界の残酷さ 『アンダー・ザ・シルバーレイク』

ヒトは言う。偶然ではなく必然だと。
創作者たちは語る。カネのためではないと。

はっきりさせよう。偶然は偶然だ。あなたが「それを意味づける」。*1
プロの創作者たちはカネのために物を作る。*2
だが我々は“真実”に目を背け、以外の意味を探す。
その残酷さを監督が自虐する。

人生の目的なきサム(アンドリュー・ガーフィールド) *3 は、
暗号論や陰謀論へ精通し、他人より世界にくわしいと思っている。
そのサムが好意を持つ少女サラが、突然、意味ありげに失踪。
行方を彼が追う。

シンボル、都市伝説、暗号、意味ありげな要素が観客を引き込む。
画面はうつくしく『イット・フォローズ』で脚光を得た監督の才能は本物だ。
だが「秘密の解明」に夢中なサムを、監督はどこか滑稽かつ冷淡に映す。
意味のないことへ夢中なサルのように。*4

シルバーレイクの地下にたしかに秘密はあった。
ところが目撃したのは、我々の幻想を打ち砕く創作の現実だ。

だれかの人生を形作る名曲を秘密で作曲してきたソングライターが語る。
その創作は我々が丸めて捨てた鼻紙を、また広げて作ったものだ、と。
鼻紙に人々はカネを払う、と。*5

サム、そうして監督自身が真実に耐え切れず、
ギターでソングライターの頭を叩き潰す。

世界の真実は見た。サムはサラに本当を語り、
この世界から脱出しようとする。彼女は拒絶する、
だってラクだから。*6

失意のサムに隣家の鸚鵡がなにかをいう。
飼い主が言う。
意味? わからないわ。


※1 「あらゆる偶然に意味がある」と想像するのは人間の傲慢だ。仮の話で、その偶然があとで意味をなそうとも、それがわかるのは後々だからだ。同時に、ある“偶然”を拾い上げ必然であったと意味づけるのは、ある個人の心の働き以外なにものでもない。その必然は他者にとっては「偶然」にすぎず「必然」にはならない。

※2 あなたと創作者たちは一緒なのだ。その仕事で生活の糧を得る。「あなたのために作品を創作しているわけではない」。この残酷な真実は本作のキーワードだ。

※3 監督はサムを「消費していくだけの/浪費していくだけの人物」だと描写する。自分では生み出さず、サムは他者の創作を自分の創作であるかのようにふるまい、自分が一番作品を理解していると思い込む。だがサムは最後に変る。作り手の喜びを知る。

※4 つまりは、この感想の書き手の「私」や訳知り顔で作品を評し、ご満悦な「君」のような人物だ。暗号論や陰謀論に意味などない。意味などないのだ。妄想だからだ。

※5 残酷だが一部は「真実」だ。創作とは基本、再生産や再設計の要素が大半をしめる。その再生産や再設計の「雛形」となるような作品はそうは誕生をしない。我々は繰り返しに金を払う。素人でも一緒だ。あなたのアマの創作は、なにかの作品の模倣だ。そしてこれは、監督最大の“自虐”と“絶望”でもある。

※6 消費するだけになればラクになれる。サラは自身を「殺害」したのだ。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年12月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031