重松 清の代表的ベストセラーと言っていい作品。
主人公永田一雄は妻にもまだ伝えてないリストラの事実、
その妻は毎晩夜遅くか、泊まり歩くか、いない日が続く、
息子は受験失敗から引きこもり、家庭内暴力に明け暮れる。
「もう死んでもいいかなぁ」とベンチに腰を下ろす。
もう、死のう、ではなく、死んでもいいかなぁ、である。
五年前、事故で死んだ橋本親子が運転する不思議なワゴン。
その車に拾われ、妻や息子が躓いたきっかけを知る、
苦しい旅が始まる。
そして、
今わの際にある、父、ワンマンで、頑固で譲らない、一雄の嫌いな
父親が、自分と同世代の姿で乗り込んでくる。
和夫と、広樹(息子)、一雄と忠雄(父)、橋本義明と健太、
それぞれ、違う葛藤の中を生きてゆく、三組の父子。
壊れてしまった、家族のかけらは拾い集められるのだろうか、幸せとはなんだろう。
あの時、ああすれば良かった、あの時、なぜ気づいてあげられなかったのだろうか、
の時、なぜ、もっと勇気を持てなかったのだろうか。
過去を振り返っても仕方がないけど、人間長くやっていると、
良い事よりも、失敗だらけの人生がピックアップするばかりだ。
死んだら四十五日は家の周りを離れない(成仏できない)なんていわれるが、
本作品は、死んでからではなく、死ぬ前の四十五日である。
私自身、神社仏閣を巡るのが好きだけど、
小説、宮本武蔵の中にでてくる、沢庵和尚の云った、
「死んだら何にも残らん、真っ暗というか無だ、な〜んにもない」という言葉が
好きで、これを一番信じたい。
重松清らしい、父と子の作品だとも思う。
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