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2018年08月04日12:19

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万引きどころじゃない話!「万引き家族」



是枝裕和監督の映画は「海街diary」しか観た事がありません。
「海街diary」はどうという話でもないのですが、綾瀬はるか、広瀬すず、夏帆、長澤まさみが住む家に僕も同居したい、屋根裏でも良いから!と強烈に思わせる楽しい映画でした。

まあ、特に好きな監督というわけでもないので、「万引き家族」も観に行く予定は無かったのです。
なにしろ、この映画には綾瀬はるかも広瀬すずも出ておらず、出ているのはリリー・フランキー、樹木希林、安藤サクラという、人殺しの代名詞のような役者ばかり。
「悪魔のいけにえ」の日本版という事ならベストな人選ですが、万引き?
そんなチンケな犯罪でおさまる様な連中じゃないだろう!と思ったら・・・案の定でした。

万引きは絶対にいけません。
僕が小、中学校の頃は防犯カメラ等も少なく、万引きは盛んに行われていた様で、「こち亀」を万引きで揃えたという話も聞いたくらいです(事実かどうかは不明)。
実は僕も、小学生の頃一度だけ友達に誘われて、近所のスーパーでアポロチョコを万引きした経験があります。
発見されませんでしたが、緊張するだけで面白くも可笑しくも無かったのでそれきりです。
ただ、他の子供の頃の記憶などほとんど無いのに、アポロチョコを見る度にこの事を思い出すというのは、自分にとって大きな罪悪感を残したのかもしれません。

でも、この映画では万引きシーンが楽しくユーモラスに描かれていて、これはこれで良かったと思います。
ただ、やっぱり万引き失敗のリスク場面も描いておくと、スリリングさも増したかもしれません。
経営に行き詰まり、自殺を考えていたスーパーの店長が、万引き家族の犯行を目撃!
怒り爆発の彼は家を突き止め、巨大なハンマーを片手に家に殴り込むと、妖怪の様な家族(安藤サクラ、樹木希林)がナタや動物の骨で応戦し、家の中は血塗れになるという韓国バイオレンスの様な展開にすれば、「万引きだけは止めよう」という気持ちになると思います。

映画前半は、虐待されていた女の子を「万引き」した家族の、ユーモアと人情に犯罪に溢れた生活を淡々と描きます。
とにかく何かしら食べているシーンが多く、腹が減って壁を食べてしまうような売れないお笑い芸人とかに比べると全然呑気な生活です。
生活に困って万引きをしているのではなく、節約の延長と親子のコミュニケーションとしての万引きなんですね。
だから、「私はダニエルブレイク」のような社会問題にスポットライトを当てる映画では無いのです。

要はシンプルな人情モノ映画なのですが、ただの人情モノでは無いのが、この家族には秘密がある事。
ある人物の衝動的な行動をきっかけに、危ういバランスで成り立っていた楽しい生活が瓦解していく事態になります。
ここが思っていたより凄くて、タイトルにもした「万引きどころの話じゃない」事になるのです。

多分、こういう映画だろうと想像して「俺はいいかな」と思っている方が多い(自分もそうだった)と思いますが、そんな映画じゃないとは言っておきたいです。
結構ビックリドッキリかつ不穏な真相に驚かされます。

ただ、カンヌ映画祭のパルムドールを受賞する映画としては、極めてエンターテイメント性の高い、普通に多くの人が楽しめて感動する内容ではあります。
カンヌ映画祭で喜ばれる映画なんて、子供が殺されるか殺すかするような極めて非情な展開が当たり前の様に登場し、観ている人が大変な心のダメージを受けたうえに一切救いが無く、しかもよく意味が分からない話ばかりだからです。
様々なネガティブキャンペーンもあったものの、むしろ余計話題になって結果的に大ヒットしたのはとても良かったと思います。

ヒットのもう一つの要因として、もしかしたら子供虐待死の事件報道もあったかもしれません。
実の親が徹底的に精神的にも肉体的にも虐待しまくって殺してしまう事件が頻発し、しかし周りの人間や支援機関が何も出来なかったという痛ましい内容に、多くの人が悲しみ、憤ったことと思います。
現実では救われないのが常の子供が、この映画の中では一時でも救われる瞬間があるわけで、みんなこれが観たかったのかもしれません。
子供が虐待死するのを遠くで傍観するくらいなら、誰か万引きしてやってくれ、という気持ちで、それがリリー・フランキーであっても応援したくなったのだと思います。

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