mixiユーザー(id:66468869)

2018年07月07日13:42

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オリガ・モリソヴナの反語法

オススメ187。"その瞬間に思った。オリガ・モリゾワナの反語法は、悲劇を訴えていたのではなくて、悲劇を乗り越えるための手段だったのだ、と。"一級の通訳として知られた著者の【最初にして最後の長編】となった本書は、確かな教養に裏付けられたシンプルで芳醇な内容が素晴らしい。

個人的にも、若い世代には冷戦、そしてソ連といった言葉がまるでリアリティを失ってしまっている現在において。著者が徹底してアーカイブ資料にこだわった上で実際の歴史を【涙と笑いのミステリー】に昇華した本書は、小説という枠にとどまらない普遍的な重みを感じました。
また【自由の身であった頃、心に刻んだ本が生命力を吹き込んでくれたのです】収容所の人たちがそれぞれに文化芸術の力で支えあった描写には自身も少し関わる身として心を打たれました。

国家や体制に自由や人生を奪われたとしても、強く支えあって生きた女性たちの姿に共感したい誰か。あるいは予想外の災害に日本中が苦しむ中、沢山の人の命を国家が昨日【予定通りに奪って】他国から野蛮だと指摘されている事を恥ずかしく思う誰かにもオススメ。
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