トレーニングということに、どうにも納得のいかない人生でありまして。
俺、劇作も演出も制作も演技も、トレーニングなんかしないし人にも求めない。
仕事だって、誰にでもできる業種であることを基準に選んできた。
エリートに生まれついてないし、ギラギラにサクセスストーリー狙うのも柄でもないし主義に反する。
ただただ、誰でもできることの範囲で生活して、その上で大きな成果が上がるように生きていたいし、そうやってきた。
仕事の原理なら簡単だ。客を怒らせない、免停にならない、カラダ壊すほど働かない。それだけでいい。
芝居だって原理は簡単。舞台は奥行きを活用する、俳優は落ち着いて喋る。それだけで十中八九うまくいく。
水没はすごいか？すごいかも知れないが難しいことは何にもない。ただ飛び込むだけだ。現に当日参加枠でも充分存在感発揮できる。
てんでんライトはすごいか？ただお客に照らしてもらうだけである。めっちゃ簡単。
すべてこの伝でやっていきたい。
さて。
ロシアを歩いて横断することにした。とりあえず道がある部分で(東の果ては道がない)13000キロ。冬歩いてると死んじゃうので夏だけ。4夏で歩ききると思う。ポーランドの脇にある飛び地のカリーニングラードから、カムチャツカの東のチュクチ管区まで。すごいか？すごいかも知れないがただ歩くだけである。野宿ばかりになるが、ただ野宿するだけである。ロシア語が必要になるが必要な短文だけ100も覚えりゃいいだろう。どうやって時間作るか？定年を待つのだ。金はどうする。冬の間に帰国して稼ぐ。家族はどうする。まぁ離散はしまい。演劇祭は？冬にやるか代理を探すか。
ほら。なんにも困難などない。ロシアは治安も苛烈ではない。お天気は苛烈かも知れないが落雷だけ避ければ死にゃせん。
そんなアスリートみたいなカラダになれるのか？それは分からんがどうせ老いてるんだからスローペースでやれることだけやりゃなんとかなるだろう。13000キロったって最初の数キロは散歩だ。そのまま通せばいい。宮沢賢治は病弱だし自転車にも乗れず逆上がりもできなかったが37歳で死ぬまでに岩手山に200回登ったという。人のカラダは案外必要に応じた生活に馴染むもんだ。
冒険家は冒険をすればいい。僕は普通の人としてロシアを横断する。それが普通の人の希望になるだろう。ハイエルダールはリレハンメル五輪の開会式で｢人間は挑戦をやめない｣と言ったが、なにもそんなに力まなくても大丈夫。だと思う。
初年で挫けるかも知れない。でも初年の予定、カリーニングラード→チェリャビンスク4500キロですら、まだ歩いた記録はないのだ。1年でコケてなおギネスだ。こりゃおいしい試みだ。
最後の2000キロは道がない上に夏でも雪が降る。オオカミとヒグマだらけの山なのでこれは冒険ぽいし、ハンター同伴しても死ぬかも知れん。でもその頃はとうに還暦過ぎなので死んだってとくにどうこういうこともないわね。頓挫した道のりはのちに誰かが完結させてくれるだろう。切り開けさえすりゃいいのだ。
あと6-7年で息子の学費と家のローンは払い終わる。そしたら出かけよう。ゴットフリート叔父とかスナフキンみたいなのは職業なんだろうか。演劇が生活であるようにまた旅も生活である。生活であることをはみ出さないように生きていきたい。生活のまま13000キロを歩くつもりです。
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