mixiユーザー(id:13333098)

2018年02月12日11:59

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「スリービルボード」を観ました



唸るような傑作・・・。
最後まで観終えて、本当に凄いと思いました。
脚本家が監督をやっているという事もあって、とにかく物語として実に良く出来ています。

先が読めないというのは、面白い物語の必須条件だと思うのですが、この映画は最後の最後まで、果たしてどこに着地するのか全く見えません。
まるで後期高齢者の運転が運転するタクシーに乗ったら、居眠りやよそ見を繰り返し、足元に落ちた携帯を拾おうとしたり、後ろを振り向いて「お客さん、先日北九州に行ったら成人式帰りの若者に全裸にされちゃいましてね!」と面白トークを繰り広げたりする度に右へ左へと大きく蛇行する運転に、存分にヒヤヒヤされるような感覚です。

しかし、これが最後に実に見事な、「ここしかない」という地点に見事に着地するのです。
遂に崖からジャンプしたタクシーが、奇跡的な着地を決めたと思ったら、実は運転手は老人の格好をした土屋圭市だったというオチのよう。
「殺す気か!」と涙を流すダチョウ倶楽部の上島の様に、本当に涙が止まらない感動的なラストでした。

娘をレイプされ殺された母親が、捜査の進まない警察に苛立ち、遂に道端の3枚の巨大看板(スリービルボード)に警察署長への告発を掲載した事をキッカケに、色々なトラブルが発生するというのが発端です。
彼女だけが主人公ではなく、警察署長やその部下(狂犬)も主要人物として、その人間性が深く掘り下げられて描かれたり、存分に酷い目に遭ったりします。
観客が味方になりたいと思う人が実は・・・という事が何度も繰り返されるので、常に安心できないわけですが、このために最後に訪れる感動も非常に深く重層的なものになっていると感じます。

黒人や女性、小人等に対し、容赦なく元気よく差別する人間ばかりが登場します(主人公の旦那が、小人に対して言うジョークが最高に酷くて面白い!)。
彼らを批判的に描く映画は昨今、次々に公開されていますが、この映画は更にその先を行っています。
冷酷な差別主義者も完全な悪人というわけではなく、相手に対してちゃんと触れ合えば優しさやも見せてくる。
これは別に当たり前の事ではありますが、そこを非常に説得力のある見せ方をしている点がこの映画の特に優れている部分だと思います。

突発的な暴力も、毒のあるユーモアも(この映画、非常に笑える部分が多いです。半分コメディーといっても差し支えないほど。)、情け無用な展開もあり、刺激の強い娯楽エンターテイメントとして楽しめる映画であり、期待していなかった人情話に思いきり感動させられるヒューマンドラマであり、現実に即した社会派映画でもあります。
別にどの要素を期待して行っても楽しめる事請け合い、個人的にも今年の3本の指に入る(もう一本はRAWが余裕で確定!早くも残り一本のみ・・・)作品でした。

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