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2017年10月27日23:49

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われ優れた被造物。より劣った創造主の上に立つ 『エイリアン:コヴェナント』

叛逆の物語だ。
同時に本作は、世界で最も有名なアイコン「エイリアン」誕生の物語だ。

前作『プロメテウス』の直接の続編で、*1
入植地をめざす植民船コヴェナントは正体不明の通信を受信。
楽園のような惑星に降り立ち、絶対の恐怖と出会う。

その恐怖の根源は前作唯一の生き残りアンドロイドのデヴィッド。
デヴィッドは一行へ同行する同型アンドロイド、ウォルターに「創造」を語る。
そうして自身が創造した“最悪”の「成果」をしめす――。
以後、楽園の地獄へ。おなじみエイリアンが姿を現す。

エイリアンは自然発生した生物ではなかった。
この部分に本作の骨子がある。

観客はアンドロイドのデヴィッドが、
エイリアン創造に関与した事実をつきつけられる。
デヴィッドは人類の造りし者。つまり被造物。
だが、造物(ぞうぶつ)は自身の境遇に満足してない。

最初にウェイランドと行う会話。*2
ヴァルハラ城への神々の入城。*3
シェリーの「オジマンディアス(詩)」は彼の叛逆の意志だ。*4

一方、エイリアンはエンジニア――
『プロメテウス』で人類を創造した巨人型異星人の造りし者。
だがエイリアンの原型――黒い液体は前作でエンジニアを全滅させてしまう。

創造主が被造物を制御不能となって、今度は被造物が創造主へ変る。
物語最後の生き残りは、いまや創造主と化し、被造物とともに歩み出す。

だが、ならばだ。
その被造物が、ふたたび創造主を裏切ることもあるかもしれない。


※1 この作品は前作の予習・復習が必須だ。でないと登場人物と時系列的な順序が理解できない。

※2 アンドロイド(マイケル・ファスベンダー)は最初の場面でウェイランドに「自身は永遠の命と人類同様に高い知性を持つ」と語る。冷静に判断した場合、人類はもはや造物以下だ。

※3 リヒャルト・ワーグナーの「ヴァルハラ城への神々の入城」は北欧神話の神々が栄光かつ最高の支配の殿堂たるヴァルハラ城へ入場していく場面でかかる。この入場のあとで神々と巨人が滅亡するのをロキは予言する(ロキは神々と巨人の血を引く北欧神話のトリックスターだ)。この予備知識があれば「神々」「巨人」「ロキ」がなにをさすかわかるはずだ。ただ、ロキは「神」だ。最後の行進で「ロキ」は「ヴァルハラ城〜」をAIに要求し得意満面歩み出す。「ヴァルハラ城〜」は“支配存在”の滅亡を予言するためにかかる。リドリー・スコットは「〜:コヴェナント」の続編で「AI」を主題にするという。

※4 「古代の国エジプトから来た旅人はいう 胴体のない巨大な石の足が二本 砂漠の中に立っている その近くには なかば砂にうずもれた首がころがり 顔をしかめ 唇をゆがめ 高慢に嘲笑している これを彫った彫師たちにはよく見えていたのだ それらの表情は命のない石に刻み込まれ 本人が滅びた後も生き続けているのだ 台座には記されている “我が名はオジマンディアス 王の中の王 全能の神よ我が業をみよ そして絶望せよ” ほかには何も残っていない この巨大な遺跡のまわりには 果てしない砂漠が広がっているだけだ パーシー・シェリー オジマディアス」 これはあきらかにデヴィッドが「人類」と「巨人」を睥睨(へいげい)している現在の心理の胸中だ。同時に彼の未来かもしれない。
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