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2017年09月23日18:50

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スーチーさんの困難

 昨年10月に火の手が拡大、先の8月に大きく燃え上がったミャンマー⻄部ラカイン州の少数 派イスラム教徒「ロヒンギャ」の問題。国際社会で「民族浄化」「ジェノサイド」といった言葉までが飛び交いだし、国家顧問であるノーベル平和賞受賞者アウンサンスーチーの不作為への風当りも強い。
そのスーチーさんが19日国連総会をあえて欠席し、首都ネピドーで国民と国際世論に向けてこの問題に関するスピーチを行った。

 今年5月に短期間ミャンマー観光をした私奴は、ロヒンギャ問題についてはアムネスティ・インターナショナルの報道を通じて承知していたが、滞在中この問題について敢えて持ち出すことは避けていた(一介の旅行者が持出す話題としては礼を失する可能性大だし、よしんば持出して話を聞いてもどの程度に理解できるか疑問)。
が、帰国後はTV(早朝BS1ワールドニュース アジア)やネット上の国内新聞、CNNco.jp、Newsweek日本版などを通じて、ミャンマー情勢についての情報に注目していた。(それにしても国内各紙は、ミャンマーについてはニュースや論評が少なくかつ遅いなあ。ここへきて(9月2週目あたり以降)、やっと各紙とも報道し始めた)
この間に感じた蛇足めいた話だが、ノーベル平和賞受賞者としてのスーチーさんへの「行動を起こすべし」と期待を込めた国際世論の声は理解できるところだが、15日付け(国連総会は欠席だが別途19日にスピーチとの報があった段階)の産経新聞のコラム産経抄には「スーチー女史のノーベル平和賞を取り消せ」とあった(なんという稚拙で短絡的な。)

 20日の毎日新聞によれば、19日のスピーチでスーチーさんは、「ロヒンギャに移動の⾃由を認めたり、ロヒンギャの国籍を剥奪した国籍法を⾒ 直したりする」とし「「我々はミャンマーが宗教的な信念や⺠族性、政治的イデオロギーによって分裂させら れることを望まない」と訴えた。また、「帰還を希望するロヒンギャには、⾝元確認の⼿続きを始める」とした一方で「ミャンマーは複雑な状況にある。昨年3⽉の政権が発⾜以来、すべての課題の克服を期待するには、あまりにも時間が短い」と理解を求めたとも。

 昨日の日経新聞の「ロヒンギャ問題「外国投資家の懸念は当然」」とのインタビュー記事や今朝のNHK NEW WEBの「ロヒンギャ問題 スー・チー国家顧問の演説全⽂ 」を読んでみて、「やっぱりなあ!」と、次の二点が気になった。

1.ミャンマーは130以上もの少数民族を抱え、民主化以来少しく沈静化(8つの少数民族武装組織との間で,全国規模の停戦合意)の方向にあるとは言え、今回問題化しているラカイン州以外にもカチン州シャン州北部で戦闘が拡大しかねない火種が残っている。とても政治・経済的に安定した普通の国と同じように論じることは不可能。

2.とりわけラカイン州でのロヒンギャ問題には、大英帝国インド総督・ビルマ総督支配の時代から端を発し、第二次大戦後のイギリスからの独立(イギリスはビルマでの労働力確保にベンガル人を利用)時の混乱などの歴史的背景がある。

 無論、ロヒンギャ問題の現状は、人道的見地から早急に解決されねばならぬ課題ではある。しかし、上記したような根の深い背景もある。スーチーさんの困難は残念ながら、まだ長く続くと見なければならない。
2013年来日したスーチーさんは、既にこんな言葉を残していたそうな、「「私は魔術師ではありません。もしそうなら“民族間や宗教間の対立よ、消えてなくなれ”と叫んで、あっという間にそれらを消してみせるでしょう」。

蛇足:世界を見渡せば、「スーチーさんのノーベル平和賞を取り消せ」とのネット上の署名活動が40万人の賛同を得たとのニュースもある。その尻馬に乗ったかのように、「スーチー女史のノーベル平和賞を取り消せ」と紙面に書く産経抄とはなんだろう?

ロヒンギャ問題に関し、少し古いが比較的冷静で丁寧な解説している下記の2サイトは有用だ思った。
https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20170227-00068117/

https://www.refugee.or.jp/jar/report/2016/06/01-0000.shtml?gclid=CjwKCAjwjJjOBRBVEiwAfvnvBErut-WQmNmlZGw_zszB2VI38ablTC_P5vxj7h6V6C9f0JR7nQ0uBxoCyf8QAvD_BwE

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