mixiユーザー(id:280973)

2017年09月23日12:58

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『禅と骨』


 間に合うか間に合わないかという問題がある。戦前から現在に至る時代を生き抜いてきたユニークな人物を取材するのだが、平均年齢を超え本人の実像に迫り切れる前にいなくなってしまう。本人を知る関係者もまたどんどん消えていく。間に合うか間に合わないか。桜木町のメリーさんもそうだった。今回のヘンリ・ミトワについても間に合ったとはいえない。数年にわたって彼に向けてカメラを回しているうちに彼の寿命はついえた。しかし、間に合わないのなら間に合わないなりの落とし前のつけ方がある。ひとは死して骨になる。骨は何にも語ってくれないけど、骨ほど雄弁なものもない。

 妻や子どもたち、彼の人生に関わってきた者たちの証言、本人が書き遺したものを参考に、ドラマとアニメとで、ヘンリ・ミトワという日米ハーフの著名な禅僧(後半生は)の道程を再現するが、一向に実像は浮かび上がってこない。何故彼が『赤い靴』母娘伝説の映画化に拘ったのか。実父が映画配給の仕事をしていたからか。母を日本に残して渡米してしまった負い目ゆえか。情報は示されるものの腑に落ちない。しかし、これはその腑に落ちなさはそのままに、「分かったふりをしない」ドキュメンタリーなのだ。そして映画は、最後の最後まで、まったくもって人を食っている。


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