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2017年06月25日22:24

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愛は悪を挫く。娯楽へと寄ったボストンマラソンテロの一部始終 『パトリオット・デイ』

混迷の時代の「悪」に打ち勝つ方法は、たしかに“愛”なのかもしれない。

2013年4月。
伝統あるボストンマラソンで発生したテロは壮絶な現場で世界に衝撃をあたえた。*1
事件は発生から120時間後。犯人のうちの一人が死亡。一人の逮捕で幕を下す。
本作は、その犯人逮捕の一部始終を描く。

映画は実在の人物と、実在の捜査手法、経緯と結果をなぞる。
「爆発と救助活動」「地元警察とFBIの合同作戦本部の設立」
「犯人の屈折した動機*2」「現場再現と映像解析」「市民の情報提供」
「犯人の特定と逃走」「市街戦と銃撃戦」「戒厳令的処置」「逮捕」まで。

物語は群像劇的だ。
事件の中心に身を置く架空の警官トミー(マーク・ウォールバーグ)は、
物語をつなぐ橋渡し役。主役は、あくまで当時事件を解決した市民と政府職員たち。
監督のサジ加減はうまい。

一方、監督は一部で抑制を失う。
本作最大の見せ場は逃走するツァルナエフ兄弟と警官の市街戦と銃撃戦だ。
手製爆弾が爆発し、銃弾が乱れ飛ぶ。

たしかに現実において犯人と衝突はあった。
だが、この部分はひどく見世物的だ。
娯楽が先立ち、真実に寄り添えなくなっている。*3

テロとは根本からして正道を欠く卑怯で矮小な暴力。
だが矮小それゆえ行いやすく散発する。
その悪へと「どう立ち向かい「どう挑み続ける」か? 答えは出ない。
そんななかで「愛を持ち挑め」と語るトミーの台詞は力強い。

そうするしかないとしても――。*4


※1 発生当時、市民が撮影した現場写真が投稿され画像は一切修正されていなかった。自分も閲覧をしたが、骨が見え、肉片が飛び散り、なかには切断した四肢さえ映った。同時に彼等を救う市民や警官の姿も現場にあった。凄惨な光景であった。

※2 まずことわっておくし、それほど以後の経緯は日本では報道されなかったが、ツァルナエフ兄弟は、IS(ISIS)と直接関与してはいない。彼等は自身の所属していたコミュニティとSNSグルーブで肯定感や納得感を獲得できずに自身から「こじらせ」犯行へと及んだ独立犯的立場であった。思想犯的な位置は薄く、映画でも描写されるが犯行は行き当りばったり。誕生と同時のイスラム教徒であったわけでもない(2人は改宗によってムスリムになった)。自身の犯行と存在をアピールする側面もあるし、つまるところ、この兄弟には同情するべき側面と信念はあまりない。

※3 現実に兄弟は警官との戦闘で手製爆弾を使用した。だが、あれほどハデではなかったろう。この戦闘場面の問題は、とにかく戦うことが格好よく見えてしまうことだ。それは娯楽である。

※4 いや、それしか我々に解答はないのかもしれない。
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