mixiユーザー(id:17423779)

2017年03月29日05:16

1867 view

山ふかみ春ともしらぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水 式子内親王

山ふかみ春ともしらぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水
 式子内親王
 百首歌たてまつりし時、春の歌 新古今和歌集 巻第一 春歌上 3

「山が深いので春が来たとも知らず待ちわびる松の戸に、間遠に滴りおちる雪解けの雫よ。」『新日本古典文学大系 11』p.21

正治二年(1200)後鳥羽院初度百首。
松の戸 松の枝折戸(しおりど)で庵のさま。「松」と「待つ」と掛詞。
雪解けの雫に見入りつつ春の訪れを知った喜びを反芻しているが、「松」の青と「雪」の白との対照、「玉水」の語感も効果を添える。
立春の歌。

式子内親王(しょくしないしんのう 「しきし」とも「のりこ」とも読まれる 1149-1201)後白河天皇皇女。賀茂斎院(1159-1169)。
千載集初出(入集九首、女性歌人で最多)。新古今四十九首。勅撰入集百五十七首。
隠岐での後鳥羽院による『時代不同歌合』では斎宮女御と番えられている。
小倉百人一首 89 「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする」
http://bit.ly/10bUYTA
http://bit.ly/XugWzt

「『正治初度百首』は、式子内親王のいくつもの百首の中で最後の、そして最も完成度の高い百首である。式子の百首は、勅撰集などにおける入集数を見ると、現存する第一と第二の二つの百首が特に重視された様子はなく、散佚した百首と特に変わらないような扱いである。しかしこの『正治初度百首』は最も重んじられ、高く評価された。『正治初度百首』の式子歌から『新古今集』に二十五首が採られており、本百首から『新古今集』への入集数は、すべての歌人の中で式子内親王が最多である。ついで良経が十七首、家隆と讃岐が六首。『正治初度百首』によって後鳥羽院に認められた定家でさえ三首である。式子にはこのあとの作品がないということもあるが、それにしても突出して多い。そして『正治初度百首』をはじめとする式子の歌は、同時代の新古今歌人たちから深い敬愛と傾倒を受け、多くの影響作を生んだのである。」
田渕句美子『異端の皇女と女房歌人 式子内親王たちの新古今集(角川選書)』KADOKAWA(角川学芸出版) 2014.2 p.100

0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する