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2017年03月28日05:26

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ほのぼのと春こそ空に来にけらし天(あま)の香具山霞たなびく 太上天皇[後鳥羽院]

ほのぼのと春こそ空に来にけらし天(あま)の香具山霞たなびく
 太上天皇[後鳥羽院]
 春のはじめの歌
 新古今和歌集 巻第一 春歌上 2

「ほのぼのとまさしく春は空に来たな。あのように夜明けの天の香具山に霞がたなびいている。」『新日本古典文学大系 11』p.20

後鳥羽院御集「元久二年(1205)三月、日吉三十首御会」。
本歌「久方のあまの香具山このゆふべ霞たなびく春立つらしも」(万葉集十・柿本人麿歌集)。
ほのぼのと 夜の明けるさまや、霞がたなびき、霧がこめるさま等の象徴辞。
ここは霞を主として夜明けを兼ねる。
空に 明ゆく空であり、また大空に聳え立つような「天の」の語感(この語は香具山が天から降下したという伝承による)も働かせて「空に」と特定する。
けらし 「けり」の意(八雲御抄四[やくもみしょう 順徳天皇 1197-1242 による歌論書])。
天の香具山 大和国の歌枕。
立春の歌。

後鳥羽院(ごとばのいん 1180-1239)平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての第82代天皇。新古今集の実質的な撰者。
新古今撰入三十五首。勅撰入集二百五十八首。
隠岐での後鳥羽院による『時代不同歌合』では自分自身を中務卿具平親王と番えている。
小倉百人一首 99 「人もをし人も恨めしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は」
http://bit.ly/YYVdij
http://bit.ly/159tuQy


「この歌のめでたい感じは春の朝以外のものではあり得ないし、それは読み下しただけでまつすぐに伝はつて来るものである。… これは、例の「春はあけぼの」を典拠にしての歌だつたと見ることもできよう。さう考へるならば、本歌が『万葉集』巻十の「久方の天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも」であるといふ指摘も、単なる本歌さがしではない、もつとこみいつた意味あひを帯びてくる。『万葉』の夕の歌は『枕草子』の冒頭の作用を受けて、いちおう時刻を消された、しかし明け方の霞となる。文学史のページごとのかういふ移り変りには、さながら暦をめくるやうな趣がある。」
丸谷才一『後鳥羽院 第二版』筑摩書房 2004.9 p.26 歌人として後鳥羽院

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