敬遠の改正だって？

　星陵の松井が５打席連続で敬遠された場面は、今でも鮮明に覚えている。明
徳の監督と選手はものすごいバッシングに遭うことになるのだが、別にルール
違反をしたわけではない。無条件で進塁させるのはすごい戦術であり、まして
高校野球はトーナメント。１回負ければお仕舞いなのだ。だから勝ちにこだわ
るのは当然なのだが、「正々堂々と勝負しろ」というのは日本人の美学なのだ
ろう。ところが、それとは正反対の動きが起きているらしい。
　新聞報道によると、アメリカの大リーグが敬遠の際に４球投げるのを止める
ようルールを改正するという。つまり、申告制で歩かせるのだ。目的はズバリ
時間短縮。それに対してイチローは「敬遠も野球の一部であり、変えるべきで
はない」とコメントし、反対意見が噴出。じゃあソロホームランも走らなけれ
ば時間短縮なのか、という論議に発展している。確かにアメリカ人の合理的な
発想ではあるが、仮に日本でも導入するとなれば一悶着ありそうだ。
　振り返れば、かつてクロマティや新庄が敬遠球を打ってサヨナラ打にした例
があった。亡くなった小林も、敬遠の球が暴投になってサヨナラ負けしたのも
語りぐさだ。そういう人間臭さがなくなるのは、やっぱり寂しい。実際のとこ
ろ、野球はサッカーと違って間の長いスポーツであり、そこにさまざまな心理
戦が絡み合う。投手と打者、走者がどこに立つかだけで、戦術が変わるような
競技なのだ。敬遠の申告制はソフトボールの国際大会ではすでに採り入れられ
ているが、高校野球にまで波及するとなれば味気ないなあ。