いかがすべき世(よ)にあらばやは世をもすてであな憂(う)の世やとさらに思はん
西行法師
題しらず
新古今和歌集 巻第十八 雑歌下 1830
「どうすればよかろうか。もし今も在俗でいるなら、「世をも捨てきらずにいて。ああつらい世の中だ。今度こそ」と改めて嘆いてもいようか。しかしすでに世を捨てた身にはその嘆きも許されない。」『新日本古典文学大系 11』p.532
西行法師家集「行基菩薩の何処にか一身をかくさむと書き給ひたること思ひ出でられて」、初句「いかがせむ」。
本歌「しかりとて背かれなくに事しあればまづ嘆かれぬあな憂世の中」(小野篁 古今 雑下)。
いかがすべき 遁世しても憂きはのがれられない理、のみならず遁世以前に較べ、むしろ一層深いと識って、今更に行基の言葉が思い出されての嘆息。
あらばやは 「は」は強め。「ばや…む」と対応する語法。
「世を厭ふ」に寄せる雑歌。
西行(さいぎょう 1118〜1190)平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武士・僧侶・歌人。
詞花集初出。新古今集入集九十五首(最多歌人)。勅撰入集二百六十七首。
隠岐での後鳥羽院による『時代不同歌合』では在原業平と番えられている。
小倉百人一首 86 「なげけとて月やはものを思はするかこちがほなる我が涙かな」
http://bit.ly/19NwbaG
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