日露戦争（40）

三「日露戦争後半の山場を日本海海戦とするなら、前半の山場は旅順攻囲戦だと言える」
榴「まあ有名ですからねえ。オイラの大活躍も含めて、ウッシッシ」
歩「（調子に乗りやがって）旅順閉塞に失敗続きの海軍はついにお手上げ。海軍から陸軍
　　に対し、旅順攻略の要請があり急遽第三軍が編成されたのが５月２９日。この第三軍
　　の司令官に任命されたのが、乃木希典大将だった」
三「乃木希典大将は日清戦争後、病気を理由に第一線を離れ、那須で農業をやっていた」
榴「この抜擢には軍内部でも驚きの声が多かったそうデス」
歩「さてその攻略対象の旅順なんだけど。日清戦争の時にはわずか１日で陥落させたね」
三「清軍とロシア軍じゃ全く違うぞ。ロシアは旅順を租借後、ここを要塞化した。その堅
　　固ぶりは欧米ではつとに知られておった。あっちの軍専門家は、写真を見ただけでも
　　どの程度堅固な要塞なのかがすぐにわかってしまうからな」
榴「イギリスやアメリカの外交官は、日本側に対し旅順を落とすには最低でも１年かかる
　　だろう、と話していたそうデス。それほどに堅固な要塞だったのデスナ」
歩「前にも書いたけど、ロシア軍の要塞建築には定評がありますからねー」
三「しかしバルチック艦隊の影に怯える日本は、そんな悠長なことは言っていられない。
　　旅順攻略に課せられた任務は、遅くとも半年以内に旅順を落とすこと、だった」
歩「ここで拙者の生みの親、有坂成章大佐が登場するのデース」
榴「有坂大佐が欧米で極めて評価が高いのは、銃砲の設計のためだけではないデスネ。旅
　　順の要塞がコンクリートで固められた、これまで日本が経験したことも無い堅固なも
　　のだ、という情報を掴んでいた有坂大佐は、これまでの攻城砲では威力が不足してい
　　るので攻略は難しいと考え、沿岸砲として設置されている２８センチ榴弾砲を、旅順
　　攻略に使用することを提言したんや。ここでそれに従っていれば、旅順攻略は格段に
　　容易になったことは間違いないが、大山巌や児玉源太郎という陸軍首脳部は、必要性
　　を理解できずにこの案を退けてしまったんや」
三「有坂大佐の意見には、乃木大将も同意していたそうやで。仮に不要で終わってもそれ
　　はそれでラッキーだし、持ってくだけ持ってけば良かったんや、アホな首脳部やで」