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2016年08月22日10:22

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梅酒

昨日書いた日記が消えてしまったので、「海街ダイアリー」の感想だけでもちょっと書こうかな。

私は長谷生まれの藤沢育ち。だから「海街」の舞台にはとても縁があります。マンガの方は、江ノ電沿線の風景とか、住宅地のディテイルや、登場人物のやり取りがが面白くて、もう何回となく読み返していましたが、映画の方は、江ノ島近辺の風景が映像で見られるので、懐かしいだろうな〜と思って、見に行きました。

でも、あの映画には、それほど「いかにも湘南」って感じのシーンは出てこないんですよね。それよりも、4姉妹の住む、いかにも時代物って感じの、だいぶガタが来ているけれども、趣のある一軒家の小さな庭とか、そういうのが、ああ、鎌倉の昔からの風景だなーって感じで懐かしかった。

思わずグッときたのは、子供を捨てて出て行った母親を恨んでいる、今は成人した長女が、突然現れた母に、おばあちゃんの作った梅酒を、お土産として持たせるシーン。母が出て行ってしまった後、姉妹は、この家でおばあちゃんに育てられるのですが、庭には古い梅の木があって、毎年夏になると、梅酒を作ってきました。おばあちゃんはもうだいぶ前に亡くなったけれども、そのおばあちゃんが作った梅酒が、まだ一瓶残っているのです。

長女は、母を恨みながらも、おばあちゃんのお墓の前で「お母さん、私、いい娘になれなくてごめんね」とつぶやいている母を見て、この母も、誰かの娘だったことがあるのだな、と思い至るのです。そして、札幌に帰っていく母に、「ちょっと待って。おばあちゃんの作った梅酒が一瓶まだ残っているから、持って行って」と言って、家に梅酒をとりに走っていきます。

なぜこのシーンを見てグッと来たかというと、私は今、母の作った最後の梅酒をちびりちびり、大事に大事に飲んでいるんです。これは、確か4年前に作ったもので、いつもは初夏には日本にいない私が、たまたま6月の中旬頃まで帰国していて、もうそろそろハワイに帰るという時に、梅がスーパーで出回り始めたんですよ。その時母は、「あ。それ、買ってきてちょうだい。あなたに梅酒を作るところをちゃんと見せたことなかったでしょ。今年見せられなかったら、もう機会がないと思うから。」と言って、焼酎の代わりにブランデーを使った梅酒を作るところを見せてくれました。私も楊枝で、実のくぼみについた枝の残り(?)を取り出すのをせっせと手伝い、「一滴の水滴も残らないように梅を綺麗に拭くのが大事」と言われて、無心に手ぬぐいで実を拭きあげました。

母の言う通り、あれが最初で最後の梅酒作りの講習になりました。映画では、おばあちゃんの梅酒は、歳月が経ってすでに10年ものになっていましたが、我が家の梅酒はまだ4年もの。それでも香りが素晴らしく、買った梅酒とは比べものになりません。

味噌とか梅酒って、時が経つほど芳醇になって生き生きして、作った本人がこの世にいなくなっても、それを口にすると、まるでその人がそばにいるような感じさえするんですね。母と祖母のつながり。そして母と娘のつながり。時には死によって、また時には感情のもつれによって、あっけなく消えそうになることもあるこの繋がりを、時代を経た梅酒が生きてつないでくれているような、そんな気がしました。
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