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2016年08月19日23:33

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株と金、1% 対 99%、社会性と娯楽性をうまく折衷した密室劇場映画。でも、すこし物足りない 『マネーモンスター』

社会性と娯楽性の両方をそろえる。

投資情報番組「マネーモンスター」。
軽妙な語り口のゲイツ(ジョージ・クルーニ)がMCをつとめる人気番組に、
爆弾を持つ若者が乱入する。

若者は前日ゲイツが一押した「アイビス」の株を全額購入。
だがコンピュータのバク *1 で株価は暴落。
若者はゲイツを責め立て、
ディレクターのパティ(ジュリア・ロバーツ)は事件解決へ立ち回る。

「HFT」や「クオンツ」 難解な用語にとまどう。
ただ説明は案外簡単だ。「HFT」はコンピュータシステムが株の取引を行う手法。
「クオンツ」はHFTの土台(アルゴリズム)を設計する職業だ。*2

この株価暴落のバグは物語において二重の意味がある。

1つめはバグが真実かどうかだ。
パティは「アイビス」に不正を感覚する。
以後、物語はスタジオを舞台にアイビスのクオンツと接触し、
アイビス社長の不正をゲイツがさばく展開へと発展する。

ゲイツとパティの信頼関係。
若者へ同情し社会正義へと目覚める「マネーモンスター」。
警察も介入しおもしろい。

2つめは「貧富の格差」「1ドルの価値」を問う。
若者が人生をかけた財産はコンピュータのバグで無に返る。
その責任はだれのものか? 「HFT」を筆頭に現在の金融システムは、
1%が富を得る不公平なものではないのか?*3

社会的テーマを監督(ジョディ・フォスター)はこめる。
物足りないのは、それらの問題に、
映画が一定の解答をもたないところだ。*4


※1 もしあなたが投資信託や株式の個人売買をしているならば規約を確認してみてもよい。規約のなかのいくつかには「コンピュータシステムの不備が原因の損失は補償されない」とあるはずだ。たとえば2005年に発生したJ:COM株誤発注事件は記憶しているヒトも多いかもしれない。このシステムバグの賠償裁判は去年(2015)に判決が出て、東証とみずほ証券、双方の上告が棄却され、黒白(こくびゃく)ない状態で終了した。

※2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%A0%BB%E5%BA%A6%E5%8F%96%E5%BC%95。「機械が株式取引を行う」ということは当たり前だが、人間より膨大なスピードで演算し、結果を分析し、場合によって有利な取り引きを行うということだ。欧米では株式取引を行うクオンツとアルゴリズムを精査する法制が希望されているが、現在、HFTの規模はもはや株式取引の数パーセントをになっている。

※3 金持ちの百円と、我々の百円の価値は違う。また、HFTを筆頭に高度で高額な株式取引システムは、富める者のみ利用・開発・作成することができる。

※4 とはいえ解答などないから問題なのかもしれないが――。
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