ヒーロー活躍の翳(かげ)で悲劇を負う我々はどうするか?
マーベルヒーローを対立させるのは超人ではない。我等が人間だ。
「1」と「2」でアベンジャーズは2度世界を救済した。
だが、その能力は同時に警戒を呼ぶ。
無辜の市民の多大な犠牲を出し、*1
スタークはアベンジャーズの運営を国連へ移譲するのを提案。*2
方針をめぐり、それぞれ真っ二つになるなかで、
ウィンター・ソルジャー(バッキー)が、各地でテロをおこす。
かつての親友の無実を信じ、バッキーを追うキャップ。
だが疑惑はアベンジャーズ運営移譲の会場が爆破され加速。
ティ・チャラ王子が議長の父親を失い、真実の姿を現す――。
今後マーベル・シネマティック・ユニバースに参加する、
ブラックパンサー、スパイダーマンの登場。
空港で激突する12人のヒーロー。その映像は長年のアメコミの夢だ。*3
アントマンが無邪気に巨大化する場面など子供にもうれしい。*4
だが本作は重い。
ヒーローの対立を引き起すのは我等と同じ人間だ。
催眠ができる程度の我等がバッキーの過去を掘り起し、
スタークと対立するようしむける。*5
超人を殺す力などない。
なら超人を対立させよう。
その動機は超人活躍の翳で発生した悲劇。
名も無く、映像にもならず、愛する者をうばわれ、
一顧だにもされなかった復讐の魂の絶叫だ。*6
復讐するべき真っ当な理由を持つ我等がヒーローを引き裂き、
分裂の楔(くさび)を打ち込む。ヒーローよ。我等をおそれよ。
※1 これはしかたなかった。ある任務でスーカレット・ウィッチはキャップの危機を救う結果、ビルの内部へ能力を解き放ち大量の死者を出す。ヒーローとて万能ではない。だが世界はヒーローを糾弾した。
※2 ちなみに、この社長のメンタルがしっかりしていれば“エクストリミス”の騒動は発生せず(『アイアンマン3』)、ウルトロンは誕生しなかったのだ(『アベンジャーズ2』)。だけれど国連に運営を移譲。社長そろそろしっかりしてもらわないと……。
※3 映画と技術の進化でもある。
※4 さすがはマーベル。ヒーロー作品は本来子供のものだ。
※5 これもしかたなかった。ウィンター・ソルジャー(バッキー)は当時、ヒドラとソ連の協力体制のもので洗脳状態にあって自我などなかったのだ。
※6 この作品は異色も異色だ。なぜならヒーローの倒す純粋なヴィラン(悪役)は一切登場しないからだ。黒幕はいない。もしもあえてヴィランを見い出すとすれば、ヴィランは我々「人間」の格好をしている。
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