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2016年06月24日23:30

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ある意味ジャンル映画。“そしてだれもいなくなった” 『ヘイトフル・エイト』

最初に告白しておきたい。
本作はアクションでもサスペンスでもなく、あるジャンル映画だ。
ジャンルの名は「クエンティ・タランティーノ(QT)」。 *1
監督のファンならばよし。でないと、まったくオススメできない。 *2
そのうえQTがしかけるのは吹雪のなかの密室殺人。
すべての登場人物が消え去る物語だ。

賞金稼ぎのマーキンス(サミュエル・L・ジャクソン)は、
殺して凍った賞金首を積み上げ、椅子にし、吹雪のなかで馬車を待つ。
もう、その時点で魂をわしづみむ。*3
馬車に乗るジョン(カート・ラッセル)はマーキンスと同業で知り合い。
罪人のデイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)を、
近くの町へ護送する途中だ。

馬車は向う町の保安官を拾い上げ、
これまた一癖も二癖もありそうな野郎が集う小屋で暖を取る。

吹雪の小屋に人間が8人。その8人が抱く過去や現在のそこはかとない関係。
とどめは全員が“悪人”だ。

キャッチ・コピーは「密室ミステリー!」となってはいるが、
正直なところ推理要素など“ない”。

「小屋の扉の蝶番はなぜ壊れたか?」
「床と床の隙間にゼリービーンズが一粒どうしてあるのか?」

原因を振り返る視点は倒叙(とうじょ)モノ *4 といえなくもないだろう。
ただ、作品の本懐はQT独特の会話と台詞の謳い上げ。
共感できない人間の悪行。だが気持ちのいいピカレスクロマン。
血まみれ血みどろのスプラッター。
いつものやつである。
だからこそのジャンル映画だ。


※1 おそらくQT以外が、QTをマネしようと、その作品は「QTそっくり」「QTに影響をうけた〜」と説明されてしまうだろう。リスペクトでもオマージュでもかまわないが、数々の創作に影響をあたえた作品こそ偉大。そういう作り手の作品は、みんな、その作り手の「ジャンル」といえるのかもしれない。

※2 はっきり告白するなら、この作品はQTの「てにおは(セオリー)」がわかっていないと、まるでおもしろくない。

※3 こういう奇抜な画(え)作りは、この監督の才能ですよね。

※4 簡単に説明するなら「現在から過去へさかのぼり物事を解決する作品」。最初に犯人の犯行を全部つまびらかにし、そのあと犯人の犯行を解決していく。『刑事コロンボ』や、コロンボに影響をうけた「古畑」シリーズが代表。本作の場合、終盤で犯人が姿を現し、最初の犯行が観客にしめされる。
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