mixiユーザー(id:280973)

2015年10月28日22:18

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『ボーダーレス 僕の船の国境線』

日本映画にも数十年前こんな雰囲気なのがあったような気がする。だからといって、古臭いわけではない。

 舞台となる場所や状況について、ナレーションやテロップなどでの説明一切なし。台詞は最低限で説明セリフなし、しかも登場する人間3人(ほぼ3人と赤ん坊だけ)の使う言語が異なっているため殆ど意志の疎通が図れない。

 ペルシャ語とアラビア語がどれほど違うのか、分かる日本人は少ないだろう。小池百合子ぐらい?(笑)。イラン映画は結構公開されているから、何となくペルシャ語の方が耳に馴染んでいる(気がする)けど。両方とも右から左にウニャウニャと書くけど、文字からして違うらしい。


 一種の寓話だから、現実的にはあり得ない話でも構わないし、どこか類型的になってしまうのも問題ない。イメージとしての国境であり異国民。

 具体的に説明がされていなくても、寓話ゆえ却ってかなり断定できる。時は現代。イランとイラクの国境あたり。時たま銃声が聞こえる。河が流れていて、老朽化したそこそこ大きな船が放置され浅瀬か何かに乗り上げている。そこに一人で隠れ住んでいるイラン人らしき少年。誰に教えてもらったか、魚を釣り干物にし、また貝を拾って首飾りにして、それをバラックみたいな露店に買い取ってもらって生活している。器用であり機転が利く。世界中どこでも暮らしていけそうなタイプ。

 そんな少年の棲む船に、ある日アラビア語を話す少年兵?(銃を持っている)がやってきて、船をロープで縦方向に区切り、こっちに入ってくるなという(観客にはそれぞれの言葉が日本語字幕に翻訳されて示されるが、登場人物には互いの言葉が分からない)。おそらくイラク方向から来たんだろうその人間はどうやら船から鉄屑を持ち出して売ってるらしい。領土権と財産権?、自由を侵害されたイラン少年は憤るが、どうやらその人間に悪意はないことが分かってくる。やがて少年は偶然その人間が「少年」ではなく「少女」であることを知って驚く。少女は突然赤ん坊を船に連れてくる。産んだのか?!と一瞬思うが、どうやら弟か妹らしい。少年は粉ミルクを買ってきたり玩具をつるしたりと、少女と赤ん坊の面倒を看始める。少年と少女の距離が縮まった頃、これまた突然に大人の男が現れ少女を襲う(ように見えた)。それはどうやら戦場から逃亡してきたアメリカ兵らしい。少女は家族も家もアメリカの空襲によって失ったために、米兵への敵意をあらわにするが、少年の命がけの仲立ちもあり、3人は少しずつ打ち解けていくのだったが……

 思いもかけない終わり方が余韻を残す。


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